バーテックス(ティッカー:$VRTX)の2024年度第1四半期決算についてまとめます
- 決算概要
- 業績ハイライト
- 質疑応答ハイライト
- バンザカフター・トリプル療法のラベルへのsweat chlorideデータの記載について
- VX-548の急性疼痛適応でのラベル取得について
- 筋骨格系疼痛に対する疼痛プログラムの開発について
- Casgevyの米国での細胞回収の進捗と今後の見通し
- VX-993のVX-548との差別化について
- VX-548第3相試験データの学会報告について
- 中東でのCasgevyの価格と償還の方向性
- VX-548の処方における償還上の課題について
- ブラジルでのCF製品の市場規模
- 急性疼痛適応でのVX-548の優先審査取得の見通し
- 急性疼痛領域の営業体制の準備状況と売上インパクト時期
- 筋強直性ジストロフィー1型治療薬の開発におけるミオトニアの位置づけ
- IgA腎症治療における競合との差別化について
- 第1四半期のCF製品の売上について
決算概要
アナリスト予想平均と結果の比較をまとめます。
結果 | 予想 | 判定 | |
---|---|---|---|
EPS | $4.76 | $4.06 | 〇 |
売上高 | $2.69B (YoY +13.5%) | $2.58B | 〇 |
ガイダンス 通年売上高 | $10.65B ($10.55B~$10.75B) | $10.72B | × |
業績ハイライト
業績ハイライト
- 2024年第1四半期の売上高は前年同期比13%増の27億ドル
- 米国での売上高は8%増、米国外では21%増
- 主な成長要因はTrikaftaの好調な業績で、2〜5歳の患者層での承認後も継続
- 米国外ではKaftrioの2〜5歳への適応拡大が売上高をけん引
パイプラインの進展
- バンザカフター・トリプル併用療法の6歳以上のCF患者に対する米国およびEUでの承認申請を完了
- モデレート〜重度の急性疼痛に対するVX-548(スーゼトリジン)のNDA申請をローリングサブミッション方式で開始
- APOL1関連腎疾患に対するイナキサプリンの第3相試験を開始し、適応年齢を10歳以上に引き下げ
- 1型糖尿病に対するVX-880試験を再開
- 常染色体優性多発性嚢胞腎に対するVX-407の臨床開発を開始
- 筋強直性ジストロフィー1型に対するVX-670の第1/2相試験を開始
Alpine Immune Sciencesの買収合意
- 主力製品のポベタシセプトはIgA腎症において第3相開発直前の有望な治療薬
- 他の重篤な自己免疫性腎疾患や血球減少症でもポベタシセプトの開発を予定
- タンパク質工学や免疫療法の専門知識がVertex社の開発プログラムに寄与する見込み
2024年通期の業績予想
- 製品売上高は105.5億〜107.5億ドルの見通し(為替レートが現在のレベルで推移した場合、前年比8%増の予想)
- 非GAAP営業費用は43億〜44億ドルの見込み
- 非GAAP実効税率は20〜21%の予想
質疑応答ハイライト
バンザカフター・トリプル療法のラベルへのsweat chlorideデータの記載について
- 過去のCFTR修飾薬のラベルにはsweat chlorideデータが常に含まれており、薬力学的マーカーとして反映されている
- バンザカフター・トリプル療法の申請を提出したばかりの段階であり、ラベル交渉には至っていないが、sweat chlorideデータはラベルに記載されるものと期待している
VX-548の急性疼痛適応でのラベル取得について
- VX-548の急性疼痛適応でのNDA申請をローリングサブミッション方式ですでに開始しており、今四半期中に申請完了予定
- 主要評価項目はプラセボ対照だが、オピオイド対照群のデータもあるため、表示方法について規制当局と協議する見込み
- 糖尿病性末梢神経障害の第3相試験にプレガバリン対照群を設定した理由は、処方医にデータを提示するため
筋骨格系疼痛に対する疼痛プログラムの開発について
- 急性疼痛、神経障害性疼痛、その他(筋骨格系疼痛を含む)の3つの領域に注力
- 急性疼痛と神経障害性疼痛は自社で研究開発・商業化を行う方針
- VX-548やVX-993、さらに開発中のNaV1.7/NaV1.8阻害薬を筋骨格系疼痛に適用する可能性はあるが、この領域は自社では商業化せず提携を検討
Casgevyの米国での細胞回収の進捗と今後の見通し
- 承認から数カ月の短期間で細胞回収を開始した5名の患者がいることを喜ばしく思う
- 承認国・地域すべてで患者がおり、米国でも含まれる
- 治療センターの活性化と細胞回収のペースは今後も上昇すると予想しており、2024年はCasgevyにとって基盤構築の年になる見込み
VX-993のVX-548との差別化について
- VX-993はVX-548に次ぐ疼痛プログラムの新薬候補
- VX-548が経口剤のみなのに対し、VX-993は経口・静注の両剤形を目指している
- NaV1.7阻害薬との併用を見据えた薬物動態特性の最適化も期待
- 非臨床パッケージや製造準備の進捗からVX-993を優先し、VX-973は後続で開発する方針
VX-548第3相試験データの学会報告について
- 今秋の学会で第3相試験の結果公表を予定
- 学会発表だけでなく、論文化も目指す
中東でのCasgevyの価格と償還の方向性
- 国ごとの価格は非公開
- ただし、既存の償還合意での価格は、Casgevyの変革的価値と患者が得られる生涯のベネフィットを反映したもの
- グローバルに展開する国・地域すべてでこの価格戦略をとる方針
VX-548の処方における償還上の課題について
- VX-548については急性疼痛を幅広くカバーする適応を目指しており、他剤との使い分けよりも処方医の裁量を重視したラベリングを目指す
- 優れた有効性と安全性、依存リスクの低さから処方医が使用する患者を適切に判断できるデータを揃える
- ただしVertex社としては、有効で忍容性に優れ依存リスクが低い新薬が利用可能である中で、副作用や依存のリスクが高い酸剤を先に使用するのは合理的とは考えていない
ブラジルでのCF製品の市場規模
- 6歳以上でTrikafta適応の患者は約1,500人と推定
- これまでは人道的見地からの限定的なアクセスのみだったが、国からの償還合意を得て、適応患者全員に提供できるようになる
急性疼痛適応でのVX-548の優先審査取得の見通し
- 申請完了後60日ほどで規制当局から審査期間の通知がある
- Fast track指定、Breakthrough therapy指定を取得済みで、FDA面談での規制当局の高い関心から優先審査の可能性は高いと考えている
急性疼痛領域の営業体制の準備状況と売上インパクト時期
- 営業チームの採用は順調に進捗
- Casgevyとは異なり、VX-548は通常の低分子医薬品として販売するため、投与後の売上計上にタイムラグはない見通し
筋強直性ジストロフィー1型治療薬の開発におけるミオトニアの位置づけ
- 現在第1/2相試験を実施中で、安全性と有効性の両面から検討できる
- 承認申請に際して規制当局が求める評価項目は現時点では未定
- ただし、遺伝性疾患の根本的な治療法がなく高いアンメットニーズがある希少疾患領域では、ミオトニアのような評価項目の受容性は比較的高いと考えている
IgA腎症治療における競合との差別化について
- IgA腎症は長期的にGFRが低下し、末期腎不全・死亡・移植のリスクが高まる深刻な慢性疾患
- 腎臓専門医としては、GFR低下と相関するタンパク尿の抑制効果の高さが重要
- ポベタシセプトはAPRIL/BAFFデュアル阻害による非臨床・臨床データが示す点で高い有効性が期待でき、医師からの選択を得られると考えている
第1四半期のCF製品の売上について
- 米国の売上は前年同期比で高い伸びを示した
- 第1四半期は例年、値引率が季節的に上昇する他、値上げの影響も限定的
- 四半期ごとの変動に一喜一憂する必要はなく、米国内外共に非常に堅調な業績と捉えている
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