ブッキングドットコム(ティッカー:$BKNG)の2025年度第1四半期決算についてまとめます
決算概要
アナリスト予想平均と結果の比較をまとめます。
結果 | 予想 | 判定 | |
---|---|---|---|
EPS | $24.81 | $21.57 | 〇 |
売上高 | $4.76B (YoY +7.7%) | $4.59B | 〇 |
業績ハイライト
売上・利益・成長率の概要
項目 | 金額/成長率 | 前年同期比 | 備考 |
---|---|---|---|
売上高(Revenue) | 48億ドル | +8% | 予想レンジ上限を超過 |
調整後EBITDA | 11億ドル | +21% | コスト管理の成果で予想上限を28%上回る |
調整後EPS | $24.81 | +22% | 平均株数減少の恩恵を相殺する利息費用の増加 |
純利益(GAAPベース) | 3.33億ドル | – | 為替損失や可転債オプションの影響を受ける |
フリーキャッシュフロー | 32億ドル | – | 季節性による繰延収益の増加が主因 |
旅行指標とセグメント別成長
指標 | 数値・成長率 | 備考 |
---|---|---|
ルームナイト数(Room Nights) | 3.19億泊(過去最多) | +7% YoY |
グロスブッキング(Gross Bookings) | +7%(+10% CCベース) | 為替調整後では10%の成長 |
モバイルアプリ経由予約率 | 総ルームナイトの50%台中盤 | 直販比率の高さを反映 |
直販チャネル比率(B2C) | 60%台中盤(前年比改善) | 60%台前半から上昇 |
地域別動向
地域 | 成長率(ルームナイト) | 備考 |
---|---|---|
欧州 | 高い一桁成長率 | 安定した旅行需要 |
アジア | 高い一桁成長率 | ADR上昇に寄与 |
米国 | 一桁台前半の成長 | 消費者の支出抑制傾向、一部高価格帯宿泊は堅調 |
その他地域 | 二桁成長率 | カナダからメキシコなど特定旅行回廊で改善傾向あり |
事業別ハイライト
セグメント | 成長率/数値 | 備考 |
---|---|---|
代替宿泊(Alternative Accommodations) | ルームナイト数 +12% | 供給リスティング 8.1百万件、前年比+9% |
航空券販売数 | +45%(1,600万枚以上) | Booking.comとAgodaの成長が牽引 |
観光アクティビティ(Attractions) | +92% | 規模はまだ小さいが、今後の収益成長領域として注力 |
OpenTable(飲食) | Uberとの提携を発表 | アプリ間統合でレストラン予約+移動の一体化を推進 |
Connected Trip取引成長率 | +35% | 全取引に占める割合は高い一桁台 |
コストとマージン
費用項目 | 結果 | 備考 |
---|---|---|
マーケティング費用 | +10%(グロスブッキング比率:3.8%) | SNSの拡大投資と従来チャネルでのROI改善 |
販売その他費用 | 1.5%(前年比やや減少) | 不良債権引当減少・カスタマーサポート効率化が寄与 |
固定費(調整後) | ▲3% | G&A減少(税関連引当17百万ドル減)などが要因 |
ガイダンス(見通し)
2025年第2四半期見通し(CC=恒常為替ベース)
項目 | 見通し |
---|---|
ルームナイト成長率 | +4%〜+6%(イースター移動の影響含む) |
グロスブッキング成長率 | +10%〜+12% |
売上成長率 | +10%〜+12%(+3pt:イースターの恩恵) |
調整後EBITDA | $21.5〜22億 |
恒常為替ベースADR | 前年比ほぼフラット |
2025年通期見通し(CCベース)
指標 | 見通し |
---|---|
グロスブッキング | +中〜高い一桁成長率 |
売上高 | +中〜高い一桁成長率 |
調整後EPS | +低〜中程度の二桁成長率 |
調整後EBITDA成長率 | +高い一桁〜低い二桁成長率 |
EBITDAマージン改善幅 | +50〜100bps |
為替影響 | 通期ベースで+2ptのポジティブ影響 |
質疑応答ハイライト
AIエージェントの価値と将来性(JPMorgan)
Q(Doug Anmuth):AIによる旅行エージェントの価値について、垂直特化型と汎用型でどう差別化されると見ていますか?
A(Glenn Fogel):
- 汎用型AI(例:OpenAI、Microsoft Copilot等)との連携は「検索から実行まで」の一貫性を実現する手段。
- Booking独自のエージェントは、自社の膨大なデータとパーソナライズ能力を最大限活用できる。
- 両方のアプローチに価値があり、並行して開発中。
地域分散の恩恵と米国市場の慎重な兆候(JPMorgan)
Q(Doug Anmuth):地域別での需要の変化と、特に米国での消費動向について教えてください。
A(Ewout Steenbergen):
- 米国では高価格帯宿泊施設の堅調さと対照的に、全体的な支出抑制が見られる。
- 一方、他地域(欧州、アジア、カナダ→メキシコ等)で代替需要を確保し、全体としては安定成長。
- グローバル分散が地政学的・経済的リスクを緩和している。
アトラクション事業の戦略と重要性(Evercore)
Q(Mark Mahaney):観光アクティビティ(アトラクション)への注力が高まっている理由と戦略は?
A(Glenn Fogel):
- Connected Trip構想の一環としてフライト、支払い、アトラクション等を段階的に構築中。
- 在地での体験(イン・デスティネーション)提供は旅行者の満足度と差別化に寄与。
- 成長率92%は良好な兆候、在庫・UX強化を今後も継続。
パフォーマンスマーケティングの最適化(Goldman Sachs)
Q(Eric Sheridan):ROIの改善と伝統的チャネルでの施策とは具体的に何か?
A(Ewout Steenbergen):
- SNS広告のROIが高く、スケーラブルな領域として投資。
- 平均ROIを若干下げる要因もあるが、絶対的には正のリターンが確保されている。
- マーケティング費用全体の最適化と、直販比率の上昇に注力。
ガイダンスレンジ拡大の理由(Morgan Stanley)
Q(Brian Nowak):通期見通しレンジを拡大した理由は?業績は好調なのに慎重な理由は?
A(Ewout Steenbergen):
- 高水準の見通し(例:EPS成長中程度の二桁)自体は変更なし。
- 不確実性(地政学・消費者マインドの低下リスク)を反映して下限を広げた。
- 今後の消費者心理次第では下振れ可能性も視野に。
Geniusプログラムのパートナー活用状況(TD Cowen)
Q(Kevin Kopelman):Genius Tier 2・3の拡大がパートナー側にもたらす価値は?また、代替宿泊等への適用は?
A(Glenn Fogel):
- Geniusは需要創出のための効果的かつ柔軟なツール(地理別、モバイル別レートなど多層的戦略)。
- Tier 2・3が全アクティブ会員の30%以上に成長し、直販率・頻度共に高い。
- 景気悪化時ほど、Geniusは宿泊事業者にとって重要な需要喚起手段になる。
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