テキサスインスツルメンツ(ティッカー:$TXN)の2025年度第4四半期決算についてまとめます
- 決算概要
- 業績ハイライト
- 質疑応答ハイライト
- 1) Q1ガイダンスが季節性より強い理由(Ross Seymore)
- 2) 粗利・EPSのブレ要因(Ross Seymore)
- 3) 在庫水準:もう下げないのか?(Jim Schneider)
- 4) 個人向け・通信用の回復可能性(Jim Schneider)
- 5) 工場自動化など産業の“ためらい”は解消?(Harlan Sur)
- 6) Sherman進捗とCHIPS/ITCの効果(Harlan Sur)
- 7) 価格引き上げはしているのか(Vivek Arya / Thomas O’Malley)
- 8) メモリ価格上昇は需要に悪影響?(Vivek Arya)
- 9) CapExの低下余地・“維持CapEx”の考え(Tim Arcuri)
- 10) 車載の状況(Thomas O’Malley)
- 11) データセンターの内訳と中長期成長(Josh Buchalter)
- 12) 受注・バックログの質(William Stein)
- 13) 工場稼働(loadings)の方向性(Wolfe)
- 14) 地域別(中国)の季節性(Wolfe)
- 総括
決算概要
アナリスト予想平均と結果の比較をまとめます。
| 結果 | 予想 | 判定 | |
|---|---|---|---|
| EPS | $1.31 | $1.27 | 〇 |
| 売上高 | $4.42B (YoY +10.4%) | $4.44B | 〇 |
| ガイダンス 2026Q1EPS | $1.35 ($1.22~$1.48) | $1.23 | 〇 |
| ガイダンス 2026Q1売上高 | $4.50B ($4.32B~$4.68B) | $4.42B | 〇 |
業績ハイライト
1) 4Q25(四半期)総括
結論:売上は「ほぼ想定どおり」だが、**データセンターの急伸(+70% YoY)**が目立つ一方、個人向け(PE)の落ち込みが強く、回復はまだら模様。Q1ガイダンスが季節性より強いのは「価格ではなく受注(ブッキング)改善」と説明。
- ✅ 売上:$4.4B(-7% QoQ / +10% YoY)
- ✅ 事業別:Analog +14% YoY、Embedded Processing +8% YoY、Other は前年割れ
- ✅ 市況:半導体市場の回復継続。TIは在庫・供給能力を整備済みで即納需要に対応可能
- ✅ 重要な組織変更:エンドマーケットを再編し、**Data center(コンピュート/ネットワーク/ラック電源・熱管理)**を独立区分化
2) 4Q25 エンドマーケット別の動き
| エンドマーケット | YoY | QoQ | コメント(要旨) |
|---|---|---|---|
| Industrial | 高ティーンズ増(約+18%示唆) | 中単位%減 | 回復が広範に継続。ただしピーク比ではまだ余地 |
| Automotive | 上位1桁増 | 下位1桁減 | Q3/Q4で強かったがQ4はわずかに弱含み |
| Data center | 約+70% | 中単位%増 | 7四半期連続成長、規模が増してガイダンスを押し上げ |
| Personal electronics | 上位ティーンズ減 | 中ティーンズ減 | Q4が「通常季節性より弱い」:TV/ホームシアターが特に悪い |
| Communications equipment | 下位1桁減 | 中ティーンズ減 | 低調継続 |
ポジ/ネガ(視覚)
- ✅ 強い:Industrial(回復継続)、Data center(構造的に拡大)
- ⚠️ 弱い:Personal electronics(季節性以上に悪化)、Comms equipment(低調)
3) 2025年(通期)エンドマーケット別:産業・車載・DCが構造的に比率上昇
| 2025年売上 | 金額 | YoY | 売上構成比 |
|---|---|---|---|
| Industrial | $5.8B | +12% | 33% |
| Automotive | $5.8B | +6% | 33% |
| Data center | $1.5B | +64% | 9% |
| Personal electronics | $3.7B | +7% | 21% |
| Communications equipment | 約$0.5B | 約+20% | 3% |
- ✅ Industrial + Automotive + Data center = 約75%(2013年の約43%から大幅上昇)
- ✅ 戦略的重点:Industrial / Automotive / Data center
- ✅ 背景:アプリケーション当たりのチップ搭載量増(secular content growth)が成長ドライバー
4) 4Q25 損益(CFOコメント)
| 4Q25 | 数値 |
|---|---|
| 売上 | $4.4B |
| 売上総利益 | $2.5B |
| 売上総利益率 | 56%(QoQ -150bp) |
| OpEx | $967M(YoY +3%) |
| 営業利益 | $1.5B(売上比 33%、YoY +7%) |
| 純利益 | $1.2B |
| EPS | $1.27 |
注記(重要)
- ⚠️ EPSには、Otherセグメントののれん非現金減損等により、当初ガイダンス比で-$0.06の押し下げがあった。
5) キャッシュ・資本政策:高還元継続、在庫は高水準で“武器”と主張
| 4Q25 キャッシュ/還元 | 数値 |
|---|---|
| 営業CF | $2.3B |
| CapEx | $925M |
| 配当 | $1.3B |
| 自社株買い | $403M |
| 現金・短期投資(期末) | $4.9B |
| 有利子負債 | $14B(平均クーポン4%) |
| 在庫 | $4.8B(QoQ -$25M) |
| 在庫日数 | 222日(QoQ +7日) |
- ✅ 配当:1株$1.42へ+4%増配(22年連続増配)
- ✅ 過去12か月の株主還元:$6.5B
- ✅ 在庫:経営陣は「適正・誇り」「即納(turns)対応の資産」と強調
6) 2025年通期:フリーCFは回復(ただし“投資で作った面”も大きい)
| 2025年通期 | 数値 |
|---|---|
| 営業CF | $7.2B |
| CapEx | $4.6B |
| フリーCF | $2.9B(売上比 17%) |
| フリーCF YoY | +96%(対2024年) |
| CHIPS法インセンティブ(現金便益) | $670M |
- ✅ 6年にわたる高CapExサイクルが終盤:低コスト300mm能力をスケールで確保と説明
7) 1Q26 ガイダンス:季節性より強いが「価格要因ではない」
| 1Q26 ガイダンス | レンジ |
|---|---|
| 売上 | $4.32B ~ $4.68B |
| EPS | $1.22 ~ $1.48 |
| 2026年 実効税率見通し | 13%~14% |
強めガイダンスの理由(経営陣の説明)
- ✅ 受注(bookings)の強さ、四半期を通じてリニアリティ改善(月を追うごとに強まる)
- ✅ バックログが積み上がった
- ✅ turns(即納案件)が高水準
- ✅ Industrial回復継続、Data centerが規模として効いてきた(Q4時点でDC売上は約$450M/四半期規模との示唆)
価格について(明確に否定)
- ❌ Q1の上振れは価格ではない
- 会社の前提:2025年のlike-for-like価格は**低単位%下落(2~3%下落)**で着地、2026年も同程度の下落を想定
- Q1は年次交渉で「通常むしろ下がることが多い」とコメント
8) 生産能力・工場:Shermanの進捗が良好、ITCは35%に
- ✅ Sherman(テキサス):立ち上げが前倒し、高歩留まり、新装置で能力が想定以上
- Sherman 1:クリーンルームで一部ライン稼働
- Sherman 2:シェルを保持し、需要次第で拡張可能
- ✅ 内製化(foundry → 自社)進捗:Embeddedで追い風が2026年も続く見通し
- 65nm移行は完了し、歩留まりはfoundry並み
- **45nm(車載レーダー中心)**も進行中
- ✅ 2026年CapEx:$2B~$3B(従来通り)
- ✅ 2026年減価償却:$2.2B~$2.4B(2027年も増えるが増加ペース鈍化)
- ✅ CHIPS関連
- 直接補助:最大$1.6B(マイルストーン到達で受領)
- ITC:2026/1/1から35%
質疑応答ハイライト
1) Q1ガイダンスが季節性より強い理由(Ross Seymore)
Q: Q1ガイダンスが季節性より強い。何が特殊?エンドマーケット/地域要因は?
A(CEO/IR):
- Industrialは**YoY約+18%**と回復継続、ただしピーク比ではまだ余地
- Data centerは7四半期連続成長、Q4時点で約$450M/四半期の規模感
- 受注が四半期を通じて改善、強いbookingsがガイダンスを形成
- IR補足:リニアリティ改善、バックログ積み上がり、turns高水準
2) 粗利・EPSのブレ要因(Ross Seymore)
Q: Q4の収益は想定より良い。Q1の粗利の見方、稼働率・在庫の影響は?
A(CFO):
- Q4 EPS上振れ要因:売上やミックス、稼働(loadings)、OpExが複合的に良かった
- ただし準備発言の通り、**-$0.06(Otherののれん減損等)**があった
- Q1:OpExは低単位%増想定。粗利は売上レンジと合わせて推定を、稼働は需要に応じ調整
3) 在庫水準:もう下げないのか?(Jim Schneider)
Q: 在庫は良い水準か、さらに落とす必要は?
A(CEO/CFO):
- 経営陣は現在の在庫に非常に満足、「全技術に跨って適正」と主張
- turns(即納)需要が多い環境で顧客対応力の資産
- CFOも同調(追加コメントは最小限)
4) 個人向け・通信用の回復可能性(Jim Schneider)
Q: Industrial/Auto/DCが強い一方、PE/CommsやEmbeddedの見通しは?
A(CEO/IR):
- 通期ではPEは**+7%成長したが、Q4が季節性より弱い**
- 内訳:TV/ホームシアターが最も弱い、一方でスマホが最も良い
- 中国の家電・TVの補助金期限切れの影響の可能性に言及
- PEは「早く調整・回復した」ため比較が厳しい
5) 工場自動化など産業の“ためらい”は解消?(Harlan Sur)
Q: 以前言っていた産業顧客の慎重姿勢(FA等)はまだある?中国産業の注文は?
A(CEO):
- 産業はピーク(2022年)比でまだ約25%下で回復余地
- 受注にはやや持ち直しの兆しはあるが、持続性は見極め
- ノイズ要因として「特定サプライヤ問題」や「メモリ不足」などに言及(断定せず)
6) Sherman進捗とCHIPS/ITCの効果(Harlan Sur)
Q: Shermanの進捗、2026年CapEx $2~3Bのオフセット(ITC/補助金)を定量化できる?
A(CEO/CFO):
- Sherman:前倒し・高歩留まり、装置性能でスループット見込み改善
- 直接補助:最大$1.6B(変更なし)
- ITC:2026年から35%(設備・建屋・クリーンルーム等が対象)
7) 価格引き上げはしているのか(Vivek Arya / Thomas O’Malley)
Q: Q1強さに価格は寄与?競合が値上げを示唆しているがTIは?
A(CEO/IR):
- 明確に否定:「価格要因ではない」「Q1にステップ値上げ予定なし」
- 会社前提:2025年の価格はlike-for-likeで2~3%下落、2026年も同程度を想定
- Q1は年次交渉で通常むしろ下がる傾向
8) メモリ価格上昇は需要に悪影響?(Vivek Arya)
Q: メモリ高が民生・PC・車載需要の逆風になっている?
A(CEO/IR):
- 明確な影響は「現時点では見えていない」
- ただし、部材不足が解消すると「最後に不足部材が揃った局面で急いで発注」が起き得る、と一般論で説明(turns増加の背景候補)
9) CapExの低下余地・“維持CapEx”の考え(Tim Arcuri)
Q: CapExはどこまで下がる?5%未満(≒$1B)まで行く?
A(CEO/CFO):
- CEO:維持CapExはゼロにならず、**売上比で中単位%**が目安という趣旨
- CFO:2026年は**$2~3B**、その先は「長期売上成長率の1.2倍」が目安(ただしITC控除前のグロス)
- ITC反映後は実質「成長率と同程度のネット投資強度」へ
10) 車載の状況(Thomas O’Malley)
Q: Q1強さの説明に車載が出てこない。車載の現状は?
A(CEO):
- Q4車載はわずかに弱いが、H2(Q3/Q4)は強かった
- 車載は2023年Q3がピーク。現状はピーク比で1桁%下程度まで戻っている
- 中国はQ4も強い。ただしQ1は旧正月で季節性マイナス見込み
- セキュラーな搭載量増は今後5年程度続く見立て
11) データセンターの内訳と中長期成長(Josh Buchalter)
Q: 70%成長の内訳(電源/シグナルチェーン/EP)と成長持続性は?
A(CEO):
- 売上の中心はAnalog。内訳は「電源寄りだが、電源とシグナルチェーン双方が強い」
- VRM等の大口ソケットだけでなく、ラック内には多数の部品機会があると強調
- 高電力レール向け技術(BCDプロセス、Shermanで製造)を投資・サンプル中、今後拡大見込み
12) 受注・バックログの質(William Stein)
Q: book-to-billは?バックログの期間は伸びた?
A(IR/CEO):
- 数値としてのbook-to-billは非開示だが、バックログは積み上がった
- 受注は「先に延びた」傾向はあるが、リードタイムが原因ではない
- リードタイムは競争力維持:平均13週未満、多くは6週
- 顧客が長期注文を積む必要がない環境でも、**turns(即納)**が強い
13) 工場稼働(loadings)の方向性(Wolfe)
Q: 以前下げた稼働を、今後上げる計画は?
A(CFO/IR):
- 重要な変更があれば開示するが、現時点で大きな変化はない
- 需要を見て調整する“ノブ”はある
14) 地域別(中国)の季節性(Wolfe)
Q: 地域別の季節性は?中国は?
A(CEO/IR):
- Q1中国の車載は旧正月で季節性マイナスが通常
- 4Qは中国売上:QoQ -7%(全社並み)、YoY +16%
- バックログの地域偏りは大きくない
総括
✅ ポジティブ材料
- ✅ データセンターが“無視できない規模”に到達:YoY +70%、7四半期連続成長、Q4で約$450M/四半期の示唆。産業・車載の循環回復に頼らず、構造的な成長エンジンが増えたのは大きい。
- ✅ Q1ガイダンスが季節性より強い:受注・バックログ・turnsが改善。少なくとも“目先の失速”懸念は後退。
- ✅ 製造投資の成果が出始めている:Sherman前倒し・高歩留まり、内製化(65nm完了、45nm進行)。**供給力と短いLT(6週品も多い)**は、次の需給逼迫局面でシェア取りの武器になり得る。
- ✅ ITC 35%+補助金(最大$1.6B)により、巨額投資の“実効負担”が軽くなる。資本効率の改善余地。
⚠️ ネガティブ材料
- ⚠️ 個人向け(PE)の弱さが想定以上:Q4は「季節性より弱い」と明言。TV/家電の落ち込みが大きく、補助金要因など外生変数に左右されやすい。回復の質が脆い。
- ⚠️ 在庫日数222日は高い:経営陣は“資産”と強弁するが、需要が再び鈍れば評価損・稼働調整・マージン圧迫の火種。特に「turnsが強い」状況は、裏を返せば需要の見通しが立たず短納期依存とも解釈できる。
- ⚠️ Q1強さの説明が“受注が良い”に寄りがち:book-to-billなどの定量開示はなく、要因も「なぜ増えたか分からない」「ノイズかもしれない」と含みを残す。持続性に自信があるトーンではない。
- ⚠️ 粗利はQoQで-150bp:回復局面のはずでも、稼働・ミックス・コスト吸収の揺れが残る。Q1も需要次第でloadingsを動かすと言っており、マージンのレンジは依然ブレやすい。
- ⚠️ Otherののれん減損(EPS -$0.06):非現金とはいえ、事業の収益性/買収資産の期待値が崩れたサイン。ここは軽視すべきではない。
📈 株価インプリケーション
- ✅ 上方向:Q1の強いガイダンス+データセンターの拡大が、短期のセンチメントを押し上げやすい。特に「価格ではなく数量/受注」と言い切った点は、需要の実在性を好感され得る。
- ⚠️ 下方向:在庫水準の高さと、受注増の“説明の弱さ(ノイズの可能性)”が、数か月先の不安として残る。PEの弱さが続けばミックス悪化でマージンにも響く。

コメント