決算:BA 2025Q4

決算

ボーイング(ティッカー:$BA)の2025年度第4四半期決算についてまとめます

finviz dynamic chart for BA

決算概要

アナリスト予想平均と結果の比較をまとめます。

結果予想判定
EPS$9.92-$0.39
売上高$23.95B
(YoY +57.2%)
$22.84B

業績ハイライト

1) 2025年4Q(第4四半期)・通期の全社業績

指標2025年4Q前年比/前年差2025年通期前年比/前年差
売上高$23.9B+57%$89.5B+34%
コアEPS$9.92$1.19
フリーキャッシュフロー(FCF)+$0.375B▲$1.9B(使用)改善(前年差は未開示)
現金・市場性証券$29.4B$29.4B
有利子負債$54.1B$54.1B
リボルビング枠$10B未使用$10B未使用
  • 売上は2018年以来の四半期最高($23.9B)。
  • FCFは4Qでプラス(+$375M)。商用機納入増と運転資本の改善が寄与。
  • ⚠️ コアEPSは「Jeppesen(Digital Aviation Solutions)売却益」に大きく依存
    • 4QコアEPS $9.92のうち、$11.83がデジタル航空ソリューション売却益(クローズ)由来
    • 通期コアEPS $1.19のうち、$12.47が同売却益由来
    • (会社説明)売却益を除くと、通期EPSは前年差+ $9.10改善

2) セグメント別(4Q)

セグメント売上高前年比営業利益率(マージン)主因
BCA(民間機)$11.4B▲5.6%納入増などで改善。Spirit買収影響で約▲1.5pt
BDS(防衛・宇宙)$7.4B+37%▲6.8%量産・運営改善。ただしKC-46で▲$565M損失
BGS(サービス)$5.2B+2%(異常に高い)デジタル航空売却益の影響
BGS(調整後)$5.1B+6%18.6%商用/政府ともにダブルディジットマージン
  • ✅ BGSは(売却益調整後でも)成長+高マージンが継続。
  • ⚠️ BCA/BDSは依然マージンがマイナス。とくにBDSはKC-46の追加損失が重い。

3) 受注・バックログ(BCA / BDS / BGS)

BCA(民間機)

  • 4Q納入:160機/通期:600機(2018年以来最多)
  • 4Q純受注:336機
    • Alaska Airlines:737-10 ×105、787-9 ×5
    • Emirates:777-9 ×65
  • 通期純受注:1,173機
  • 期末バックログ:$567B(過去最高)6,100機超
    • 737・787ともに「次の10年まで確定受注で埋まっている」と説明

BDS(防衛)

  • 4Q受注:$15B
    • 米空軍:KC-46A ×15
    • ポーランド:Apache ×96
  • 期末バックログ:$85B(過去最高)

BGS(サービス)

  • 4Q受注:$10B、通期受注:$28B(年最高)
  • 期末バックログ:$30B(過去最高)

4) プログラム別の進捗(BCA)

737

項目実績/状況
4Q納入 / 通期納入117機 / 447機
生産レート月産42機で安定化年内に47へ
“Shadow factory”(2023年以前ビルド)在庫期末1機(前四半期から▲5)→ 1Qに最後を納入予定
-7 / -10 在庫約35機で横ばい
認証737-10:TIA2取得(最終段階の飛行試験へ)/-7・-10:エンジン防氷(anti-ice)設計変更の最終セット両機とも2026年の認証見込み
品質/納期納入の定時性が前年比で3倍改善、顧客から品質フィードバック改善

787

項目実績/状況
4Q納入 / 通期納入27機 /(発言上)88機 ※原稿に「88%」とあるが文脈上88機
生産レート月産8で安定化年後半に10を目標
工場指標平均リワーク工数を約30%削減(2025年)
2023年以前ビルド在庫約5機(前四半期から▲5)→ 残りは2026年に納入予定
課題座席(seat)関連が「納入」の制約(新シート構成は認証ベースラインが厳しく、OEM/FAA手続きが長期化しがち)
受注通期純受注395機(過去最高の年次受注)

777X(777-9中心)

項目実績/状況
認証777-9:TIA3承認、認証飛行試験継続(アビオ/環境制御/APUなど)
技術課題777Xエンジンで耐久性の潜在問題を検査で確認→ GEと原因/是正策を詰め中
納入計画2027年初号機納入は維持(影響なし見込み)
在庫支出2025年末で約$3.5B(想定内)
受注通期202機(ローンチ以来2番目の多さ)
キャッシュPDP(前受金)が旧スケジュール(2026納入想定)ベースで低く、2026はネットキャッシュバーン増2029にプラス転換見込み

5) 防衛(BDS)と主要プログラム

  • F-47(米空軍 第6世代戦闘機):会社は「トランスフォーメーショナルな勝利」と表現
  • ✅ 主要マイルストーン
    • MQ-25:初のエンジンラン成功(初飛行に向け前進)
    • T-7A:初の運用機を米空軍へ納入(Joint Base San Antonio Randolph)
  • ⚠️ KC-46A:4Qで▲$565Mの損失
    • 要因:Everett施設の生産支援・配賦コスト増、サプライチェーンコスト増(Spirit含む
    • ただし(改善例)4Qの工場リワーク水準は上期比▲20%
    • 納入計画:2025年14機 → 2026年19機を目標(支援リソースを高止まりさせる方針)
  • ✅ PAC-3 seeker:2025年に生産量+33%(能力増強投資+リーン)

6) ポートフォリオ/資本政策

  • Spirit AeroSystems買収を完了(統合開始)
  • Jeppesen売却(Digital Aviation Solutions divestiture)を$10.6Bで完了
    • 現金増の主因。
  • ⚠️ 負債は**$54.1B**(Spiritの負債取り込みで前四半期比やや増)
  • 投資適格の維持を重視、リボルビング$10Bは未使用

7) 2026年見通し

フリーキャッシュフロー(FCF)

  • 会社見通し:2026年通期 FCF:+$1B〜+$3B
  • 前提:Spirit取り込みで約▲$1Bの逆風(2026年)
  • 季節性:1Qは2025年1Q並みのキャッシュ使用上期は使用、下期でプラス化し加速
  • CapEx:2025年 約$3B → 2026年 約$4B(Spirit含む、St. Louis/Charleston等への投資継続)

2026年の一時的な逆風(経営陣が列挙)

  • ⚠️ 777Xの認証遅延と初号機納入(2027)に伴うネットキャッシュバーン増(PDPが低い)
  • ⚠️ 737/787の過去納入遅延に起因する「顧客補償(considerations)」と「超過前受(excess advances)」
    • 対応:生産安定化・定時納入の改善、余剰部品在庫の計画的圧縮、既存在庫機の最終納入
  • ⚠️ BDSの過去損失計上案件(固定価格開発5案件)の“駆け抜け”コスト影響(追加損失がない前提)
  • ⚠️ DOJ支払いが2025→2026にスライド(一過性)
  • (会社主張)これらを調整すると、2026年は「high single digits」のFCF潜在力がある、と説明
    • さらに長期では**$10B FCFは“very attainable”**(達成可能性が高い)とCFOが明言

2026年のBCA納入目線(Q&Aで明示)

  • 737:概ね500機
    • 2025は在庫納入が約55機あったが、2026は繰越在庫がほぼなく「生産ロールアウトが大幅増」
    • 737-10を約30機ビルドするが、2026は未納入(2027に認証後納入)
  • 787:概ね90〜100機
  • BCA全体:**納入+約10%**を見込む

質疑応答ハイライト

1) FCFの“正常化”ブリッジ(Myles Walton)

Q(要旨):超過前受(excess advances)と顧客補償(customer considerations)の規模感と正常化のタイムラインは?(2027/2028以降?)
A(要旨:CFO Malave)

  • 会社としては、正常化へ向けた差分は**「low single digit 〜 high single digits」**のレンジ感。内訳の定量開示はしない。
  • 2026年は「excess advances」と「considerations」の影響は概ね同程度
  • excess advancesの方が先に減り、considerationsはより長く残る(737/787)。
  • 777Xのネットキャッシュバーンは数年かけて改善し、2029年にプラス転換
  • 重要なのは「生産レートの改善と定時納入」に依存し、前提が変われば影響も変わる。

評価(読み取り)

  • ⚠️ 会社は“どれくらいで消えるか”を明確に区切っていない。considerationsが長期化する示唆が強い。

2) 「FCF B」の妥当性と上振れ余地(John Godyn)

Q(要旨):$10B FCFは前からの数字だが、今見ても妥当? むしろそれ以上になり得るのでは?
A(要旨:CFO Malave)

  • まずは$10Bに到達するのが最優先
  • $10Bは**「非常に達成可能(very attainable)」**で、繰り返し同じ前提(認証、BCAレート上げ、BDSの安定、BGSの継続)を満たせば到達できる。
  • $10B超の潜在力はあり得るが、「まず10」。

評価

  • ✅ マネジメントは$10B達成に強い自信を示す。
  • ⚠️ ただし前提条件(認証・供給網・BDS損失再発なし)が重い。

3) 737(47→52)/787(10→12/14)レートのボトルネックとSpirit対策(Doug Harned)

Q(要旨):レート引き上げでどこが最難関? 2018年の52機でSpiritが問題を起こしたが再発防止は?
A(要旨:CEO Ortberg)

  • 737:38→42は順調、11–12月(休暇月)でもKPI良好。
  • 42→47は当面サプライチェーン問題は大きくない(在庫が厚い)。
  • 47→52が難所:在庫正常化が進むため、供給網の性能が問われる
  • Spirit:能力増強投資が必要。買収は「自社でレート上げをガイドできる」ことが狙い。
    • Spiritがディストレスのままならリスクが高かった、という認識。
  • 787:月産8の安定化→10へ。供給制約は大きくないが、座席問題は納入制約として残る
  • 設備投資:737はEverettの新ライン、787はCharlestonの増強に投資済み/進行中。

評価

  • ✅ 42→47は見通し良好。
  • ⚠️ 47→52を“供給網のハーモニー”に依存と明言。Spiritを内部化したから解決、とは言っていない。

4) BCAマージンとSpiritの長期影響(Sheila Kahyaoglu)

Q(要旨):737/787のキャッシュマージンはどの程度/どれくらい改善? Spirit逆風や価格改定の寄与は?
A(要旨:CFO Malave)

  • 現状、737/787のキャッシュマージンは抑圧されている
  • バックログ前提では、時間とともに改善し、議論しているFCF水準を支える
  • Spiritは2026年にFCFで▲$1Bの逆風だが、長期的には
    • 生産性シナジー品質・納入の改善で良化し、長期FCF目線を大きくは変えない
    • さらに価格(pricing)の押し上げも将来のマージンに寄与。

評価

  • ⚠️ 具体的な“近未来のキャッシュマージン”は提示なし。改善は「時間と実行」に依存。

5) 2026年の737/787納入ガイダンス(Peter Arment)

Q(要旨):2026年のMAX/787納入と上期下期の流れは?
A(要旨:CFO Malave)

  • 737:およそ500機
    • 2025は在庫から約55機納入。2026は繰越在庫がほぼなく、生産ロールアウトが増える。
    • ただし737-10を約30機ビルドするが、2026は納入しない(2027に認証後納入)。
  • 787:およそ90〜100機(ロールアウト次第)
  • BCA合計で**納入+約10%**を見込む。

6) KC-46の“曲がり角”と国防増産需要(Seth Seifman)

Q(要旨):KC-46がどう“turning the corner”するのか。PAC-3のマルチイヤーや投資は?
A(要旨:CEO Ortberg)

  • KC-46損失は他のBDS案件を示唆するものではなく、当該プログラムの離散的要因。主因は767商用機側のコスト増
  • 2026年に19機納入するため、品質・エンジニアリング支援を高止まりさせる決断(今回の損失計上)。
  • 空軍は次期タンカーをソース(単独)で進める決定秋に価格提示の予定。
    • 既存契約は「悪い契約だった」。次は**“公平で儲かる”ように引き受け基準(underwriting)を厳格化**。
  • F-47は契約前からリスク投資して勝った。
  • PAC-3は既に設備投資を進めており、マルチイヤー化の議論中。追加CapExは大きくない見立て。
  • 防衛で今後大きいCapExはF-47投資の仕上げ

7) そもそも「機体OEMは儲からない」問題(Ron Epstein)

Q(要旨):事実上のデュオポリーなのに機体製造は儲からない。新型機で変えられるか?
A(要旨:CEO Ortberg)

  • 根本はリスクの理解と管理、および契約の入り方
  • **コンカレンシー、価格付け、受け入れる損害(damages)**など改善余地。
  • 既存構造(OEとアフターマーケットの分配)はすぐ変えにくいが、次の新型機で価値の取り方・提携の設計を見直す余地がある。

8) 地政学(関税・欧州の地産地消調達)リスク(Robert Stallard)

Q(要旨):関税リスク再燃、欧州のローカル調達シフトをどう見る?
A(要旨:CEO Ortberg)

  • 「心配というより注視」。状況は日々変わる。
  • 米政権は商用航空の重要性を理解し支持的。過去も難しい局面があったが最終的に悪くない着地。
  • 中国向けは一時停止後に解消し、今年も昨年並みの中国向け納入数を見込む
  • 欧州向け納入も多く、交渉の行方を注視。

9) “正常化までの差分”はBより上か下か(Noah Poponak)

Q(要旨):正常化へ向けた各要素の合計は$7Bより大きい/小さい? 2026年のBCAキャッシュは?
A(要旨:CFO Malave)

  • 合計感は概ね$6B〜$7Bのレンジ
  • ただし余剰在庫の圧縮が緩衝材になる。
  • DOJ支払いは2026の一過性で、減っていく類ではない。
  • BCAキャッシュのより詳細は、必要になれば/可視化できれば追加で示す(この場では踏み込まず)。

10) CFOのBDSレビューは“EAC深掘り”なのか(Gavin Parsons)

Q(要旨):BDSの中身を見られるようになったが、どこまで掘っている?
A(要旨:CFO Malave)

  • 「通常プロセスを迂回するEAC深掘り」ではない。
  • 戦略・オペレーション・財務の3面でプログラムを俯瞰レビュー:能力の妥当性、顧客要求との整合、EV(出来高)指標、EACの前提/リスク/機会など。
  • 何か出ればフォローするが、基本は通常のレビュー運用に接続していく。

総括

ポジティブ(✅)

  • 商用機納入600機(2018年以来最多)と、受注1,173機/バックログ$567Bは「需要面の強さ」を疑いようがない。
  • ✅ **737の生産安定化(月産42)**と、納期の定時性改善(前年比3倍改善)は、現場の改善が“数字として”出始めている。
  • BGSが調整後でも成長+高マージン(売上+6%、マージン18.6%)で、グループの利益体質を下支えしている。
  • 防衛は受注とバックログが強い($85B)。F-47の勝利は象徴的。

ネガティブ/リスク(❌⚠️)

  • 利益の質が極端に悪い:4QのコアEPS $9.92が、売却益 $11.83を含む時点で“本業が稼いだ姿”ではない。通期も同様で、売却益がなければ説明が難しい。
  • ⚠️ BCAがマージン▲5.6%。しかもSpirit買収影響で**▲1.5pt**という具体的な下押しが既に顕在化。
    • 会社は「長期的に材料ではない」と言うが、統合の難易度は高く、47→52の難所でSpiritがボトルネック化するリスクを自ら認めているに等しい。
  • ⚠️ KC-46で▲$565Mの追加損失。経営は「将来納入のための投資的な支援」と説明するが、これは裏返せば
    • 「納入を守るために損失を追加で飲む」状態が続いている、ということ。
    • さらに“次期タンカーを秋に再価格”と言うが、過去10年の失敗契約の再発防止が口約束でしかない
  • ⚠️ 777Xは“2027納入維持”と言い切った直後に、エンジン耐久性問題が出ている
    • 「影響しない」と言うのは希望的観測に見える。根因・是正が確定していない段階で納入影響ゼロを断言するのは危うい。
    • しかもキャッシュ面では、PDPの構造上 2026のネットバーン増プラス転換は2029。時間がかかり過ぎる。
  • ⚠️ FCFガイダンスが+$1B〜+$3Bと低いうえ、上期はキャッシュ使用、下期で挽回という“いつもの形”。
    • 会社は「調整後ならhigh single digits」と言うが、調整項目の多くは過去の失策のツケであり、投資家から見れば“除外してよい性質”ではない。
  • ⚠️ 顧客補償(considerations)が長引くことをCFOが明確に示唆。これは「納期遅延の傷」がまだ深いことの証拠で、将来キャッシュを長く蝕む。

株価

  • ✅ 上振れ材料:
    • 737が42→47へスムーズ、787が8→10へ進み、納入とFCFが下期に見えて改善するなら、回復期待で評価は上がりやすい。
    • 防衛バックログとF-47は中期の安心材料。
  • ❌ 下振れ材料:
    • 777X(耐久性問題→認証/納入遅延)KC-46の追加損失47→52での供給網(Spirit含む)詰まりのいずれかが顕在化すると、FCFストーリーが即崩れる。
    • とくに本決算は売却益の“見かけEPS”が大きく、次の局面で本業の稼ぐ力が露骨に問われる

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