テキサスインスツルメンツ(ティッカー:$TXN)の2024年度第1四半期決算についてまとめます
決算概要
アナリスト予想平均と結果の比較をまとめます。
結果 | 予想 | 判定 | |
---|---|---|---|
EPS | $1.10 | $1.07 | 〇 |
売上高 | $3.66B (YoY -16.4%) | $3.61B | 〇 |
ガイダンス 2024Q2EPS | $1.15 ($1.05~$1.25) | $1.18 | × |
ガイダンス 2024Q2売上高 | $3.8B ($3.65B~$3.95B) | $3.74B | 〇 |
業績ハイライト
第1四半期の業績概要
- 売上高は予想通りの37億ドル、前年同期比16%減
- アナログ事業は前年同期比14%減、組込み処理事業は22%減
事業環境
- 顧客による在庫削減が続く中、全ての主要市場で売上高が前期比減少
- 産業用は1桁後半の減少、自動車は1桁半ばの減少、パーソナルエレクトロニクスは10%台半ばの減少
利益率
- 売上総利益率は57%、前年同期から820bps悪化
- 売上減と工場稼働率低下が主因
キャッシュフロー
- 営業キャッシュフローは10億ドル
- 投資キャッシュフローは12億ドルのマイナス
- フリーキャッシュフローは直近12ヶ月で9.4億ドル
第2四半期見通し
- 売上高は36.5億ドル〜39.5億ドルの見込み
- EPSは1.05ドル〜1.25ドルの見込み
- 実効税率は約13%の見込み
質疑応答ハイライト
CHIPS法関連の補助金について
- TIはCHIPS法のグラントについては詳細を協議中で、まだ具体的な情報は得られていない。ただし、テキサスとユタでの投資はCHIPS Program Officeの目的に沿っていると考えている。
- 投資税額控除(ITC)については、これまでに15億ドルを計上済み。2Q以降は四半期で3億ドル、2024年通年で10億ドルの現金恩恵を受ける見込み。
在庫と工場稼働率の見通し
- 1Qは目標在庫水準に近づいたため工場稼働率を調整した。在庫は約8000万ドル増加。
- 2Qの稼働率は将来の需要次第で調整する。収益が回復しても、すぐに在庫が大幅に減るとは考えにくい。キャパシティを確保し在庫を持つメリットの方が、リスクより大きいと判断。
価格動向について
- 昨年半ば頃から、顧客との価格交渉はパンデミック前の傾向に戻りつつある。長期的には年率数%の緩やかな価格低下が続くと予想。
需要動向と在庫状況
- パーソナルエレクトロニクスが最も早く在庫調整局面に入り、ここ数四半期で回復基調に。産業用は業種によってばらつきがあるものの、減少幅が縮小したり一部では成長に転じ始めた。
- 中国での競争環境は、現地企業台頭や投資補助による生産能力増強などで厳しさを増している。ただし一朝一夕の変化ではない。製造・技術、幅広い製品、販売網などの強みを生かし、重要市場の中国で競争力を維持していく。
自動車市場の状況
- サプライチェーンの混乱を経て、自動車メーカーは部材調達先を見直している。中国・台湾以外からのウェハー供給を望む動きが出ている。
- TIは中国・台湾以外で大規模生産能力を増強している唯一の企業。地政学的にも信頼できる調達先としての存在価値が高まっている。
中国市場の「国産化」の影響
- 中国での半導体調達額のうち、現地サプライヤーのシェアは10〜15%程度とみられる。
- 中国・欧米のサプライヤーとの競争は激しいが、製品の優位性を武器に現地シェア維持・拡大を目指す。中国企業の中にもTIの地政学的に安定した生産能力を評価する向きがある。
株主還元の方針
- 投資フェーズにあり多額のキャッシュを要するため、直近は自社株買いを控えめにしている。
- 数年後のキャッシュフロー改善が自社株買い再開の条件。中長期的には、余剰キャッシュを全額株主に還元する方針に変わりはない。
研究開発投資の方向性
- 産業用途と車載用途は長期的に半導体需要の伸びが見込め、研究開発投資を強化している。
- パーソナルエレクトロニクスと通信機器向けは投資を従来並みに維持。これらの分野でも魅力的な事業機会は十分にある。
- エンタープライズシステム向けの投資は若干増やしている。産業用・車載ほどの勢いはないが、長期的な成長が期待できる分野と位置付ける。
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