本記事は、国際エネルギー機関(IEA)の2024年5月の月報概要を要約したものです。
要約
世界の石油需要の見通し
- 2024年の世界の石油需要は、前月の予測から14万バレル/日下方修正され、110万バレル/日の増加となる見込みです。この下方修正は主に欧州での需要低迷によるもので、第1四半期のOECD需要がマイナス成長に転じました。
- 2025年の見通しはほぼ変わらず、増加ペースは2024年をわずかに上回る120万バレル/日となる予想です。
- 世界の石油需要の健全性は、6月1日にウィーンで開催されるOPEC+の閣僚会合で、今年の残りの期間の生産政策を決定する際の主要な議題となる可能性があります。
世界の石油供給の予測
- 2024年の世界の石油供給は、非OPEC+の生産量が140万バレル/日増加する一方、OPEC+の生産量が自主的な減産を維持すると仮定すると84万バレル/日減少し、58万バレル/日増加して過去最高の1億270万バレル/日に達する見込みです。
- 2025年には、非OPEC+がさらに140万バレル/日増加すると予想され、世界全体で180万バレル/日の増加が見込まれています。米国、ガイアナ、カナダ、ブラジルが引き続き増加をけん引しますが、米国の供給拡大ペースは減速する見通しです。
- 2024年4月の世界の石油供給量は、前月から20万バレル/日減少し、1億200万バレル/日となりました。
世界の製油所マージンの動向
- 2024年4月、需要の伸びが予想を下回ったことから、中間留分の価格が急落し、処理量が低下したため、全地域で製油所マージンが低下しました。
- 欧州の製油所マージンの下落幅は、米国メキシコ湾岸とシンガポールを上回りました。これは、欧州がディーゼル燃料の生産に大きく依存しており、地域の需要が弱く、スエズ以東からの長距離輸入を引き付けるために必要なプレミアムが低下したことを反映しています。
- 製油所の活動は、2024年第1四半期のわずか0%強の年間成長率から、第2四半期には50万バレル/日、下半期には180万バレル/日に加速すると予測されています。
世界の石油在庫の状況
- 2024年3月、海上在庫が新型コロナウイルス感染症のパンデミック後の高水準に膨れ上がったため、世界の石油在庫は3,460万バレル急増しました。
- 陸上在庫は510万バレル減少し、少なくとも2016年以降で最低水準となりました。OECD全体の在庫は880万バレル減少し、20年ぶりの低水準となった一方、非OECD在庫は11月以来初めて積み増しとなりました。
- 暫定データによると、2024年4月には、海上の石油が陸揚げされたため、陸上在庫が急増し、世界の石油在庫はさらに増加しました。
- 世界の石油需要と供給のデリケートなバランスを取るためには、在庫水準を過去の平均水準に戻すことが重要となります。
原油価格の推移
- 4月上旬、中東の紛争拡大懸念が後退し、マクロ経済の景況感が弱含んだことから、ブレント先物は1バレル当たり91ドルを超える6ヶ月ぶりの高値から約83ドルに下落しました。
- 投資家の売りが活発化し、需要が低迷する中、中間留分が下落をリードしました。ディーゼル先物曲線は数年ぶりにコンタンゴ(先安)に転じ、価格差は1年ぶりの低水準に落ち込みました。
- 原油市場にタイト感の兆候があるにもかかわらず、4月から5月上旬にかけて、世界経済と石油需要の健全性に対する懸念から、原油価格は大幅に下落しました。
- 執筆時点では、ブレント原油先物は1バレル当たり約83ドルで取引されており、1ヶ月前から8ドル近く下落しています。
リンク
Oil Market Report - May 2024 – Analysis - IEA
Oil Market Report - May 2024 - Analysis and key findings. A report by the International Energy Agency.
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