2024年8月23日のジャクソンホール会合でのパウエル議長のスピーチ内容の要約です。
要約
現在の経済状況と金融政策の展望
- COVID-19パンデミック後4年半が経過し、経済の歪みは大幅に改善
- インフレは著しく低下し、直近12ヶ月間で2.5%まで改善
- 労働市場は過熱状態から冷却し、パンデミック前よりも緩和された状態に
- 失業率は4.3%と、歴史的に見て依然低水準
- 経済全体は堅調な成長を続けている
- 金融政策の目標は、強い労働市場を維持しながら物価安定(2%インフレ)を回復すること
金融政策の今後の方向性
- 政策調整(金利引き下げ)の時期が到来したと認識
- 金利引き下げの方向性は明確だが、具体的なタイミングとペースは今後のデータや経済見通し、リスクバランスに依存
- 現在の政策金利水準は、様々なリスクに対応するための十分な余地がある
- 政策の適切な調整により、2%インフレと強い労働市場の両立が可能と考えられる
- 労働市場のさらなる弱体化は望ましくないと認識
インフレの上昇と低下の要因
- パンデミック初期:急激な経済の停滞と不確実性の増大
- 強力な財政・金融政策による支援:CARES法の成立、FRBによる前例のない金融緩和
- 2021年前半:需要の急激な回復、特に財への支出が顕著
- 供給側の制約:労働力不足、サプライチェーンの混乱
- ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー・商品価格の高騰
- グローバルな現象としてのインフレ圧力
インフレ抑制と労働市場の安定
- 2022年から2023年にかけて計525ベーシスポイントの利上げを実施
- 金融引き締めによる総需要の抑制
- 供給側の改善:労働力の回復、サプライチェーンの正常化
- インフレ期待の安定が重要な役割を果たす
- 労働需要の緩和:求人数の減少、採用・離職率の低下
- 名目賃金上昇率の緩和
結論と今後の展望
- パンデミック経済は前例のない特殊な状況であり、多くの教訓がある
- FRBの「長期目標とモネタリーポリシー戦略に関する声明」に基づき、5年ごとに政策枠組みを公開レビュー
- 2024年後半から新たなレビューを開始予定
- 批判や新しいアイデアに対してオープンな姿勢を維持
- 現行の枠組みの強みを保持しつつ、必要に応じて調整を行う
- パンデミック時の経験から、知識の限界を認識し、謙虚さと学習する姿勢の重要性を強調
原文リンク
Speech by Chair Powell on the economic outlook – Federal Reserve Board
コメント