バーティブ(ティッカー:$VRT)の2025年度第4四半期決算についてまとめます
- 決算概要
- 業績ハイライト
- 質疑応答ハイライト
- 1) 受注金額/メガワットあたりTAM(JPMorgan:Tusa)
- 2) CapExの増分が支える将来売上規模(JPMorgan:Tusa)
- 3) 4Q受注が“異常に大きい”理由(Melius:Davis)
- 4) バックログを売上/EPSに変えるボトルネック(Evercore:Daryanani)
- 5) EMEA(許認可など)と中国(競争環境)—Vertical Research:Sprague
- 6) 顧客との関係がもたらす将来アーキ可視性・R&D先行(Morgan Stanley:Snyder)
- 7) SmartRun等のシステム受注、バックログ消化期間が長い理由(Wolfe:Coe)
- 8) サービス人員・組織の拡大(BofA:Obin)
- 9) 2026年もバックログは増えるか/CapExレンジの持続(Deutsche Bank:DeBlase)
- 10) 前受け/繰延収益とワーキングキャピタル(Barclays:Mitchell)
- 11) 冷却方式のミックス変化(Goldman:Delaney)
- 12) インクリメンタルマージン(Citi:Kaplowitz)
- 13) 生産能力稼働・リードタイム(TD Cowen:Elias)
- 14) パイプラインは枯渇していないか/バックログ計上要件(UBS:Mehrotra)
- 総括
決算概要
アナリスト予想平均と結果の比較をまとめます。
| 結果 | 予想 | 判定 | |
|---|---|---|---|
| EPS | $1.36 | $1.30 | 〇 |
| 売上高 | $2.88B (YoY +22.6%) | $2.89B | × |
| ガイダンス 2026Q1EPS | $0.98 ($0.95~$1.01) | $0.96 | 〇 |
| ガイダンス 2026Q1売上高 | $2.6B ($2.5B~$2.7B) | $2.56B | 〇 |
| ガイダンス 通年EPS | $6.02 ($5.97~$6.07) | $5.33 | 〇 |
| ガイダンス 通年売上高 | $13.50B ($13.25B~$13.75B) | $12.39B | 〇 |
業績ハイライト
1) 4Q(2025年)サマリー
結論:受注が異常値級に強く、売上・利益もガイダンス超過。米州が牽引、APAC/EMEAは売上減だが受注回復の兆し。
| 指標(4Q) | 実績 | 前年同期比 | 補足 |
|---|---|---|---|
| オーガニック受注成長率 | +152% | 逐次(QoQ)でも +117% | |
| 受注(4Q) | +250%超 | 経営陣コメント(“more than 250%”) | |
| ブック・トゥ・ビル | 2.9x | ほぼ3倍 | |
| バックログ | $15B | 前年比2倍超 | QoQ +57%、12〜18か月帯が厚くなる |
| オーガニック売上成長率 | +19% | 米州が突出、APAC/EMEAは減収 | |
| 調整後営業利益 | $668M | +33% | ガイダンス比 +$29M |
| 調整後営業利益率 | 23.2% | +170bp | 高ボリュームのレバレッジ、価格/コスト、改善活動 |
| 調整後希薄化EPS | $1.36 | +37% | ガイダンス比 +$0.10 |
| 調整後フリーCF(4Q) | $910M | +151% | 進捗/前受け増が追い風、税支払増が一部相殺 |
| ネットレバレッジ | 0.5x | 「戦略的柔軟性」強調 |
地域別(4Q、売上/利益)
| 地域 | 売上成長 | コメント | 調整後営業利益 / 利益率 |
|---|---|---|---|
| Americas | +50%(オーガニック+46%) | “主エンジン”。製品/顧客セグメント広範で強い | $568M /(前年差+450bp) |
| APAC | -10%(オーガニック-9%) | 中国マクロが重石、ただし「中国以外は強い」 | $49M / 9.9%(-270bp) |
| EMEA | -8%(オーガニック-14%) | 売上は弱いが4Q受注は強く、回復兆候 | $111M / 22.1%(前年差26.6%) |
ポジティブ材料(視覚)
- ✅ 受注+152%(4Q)/ブック・トゥ・ビル2.9x/バックログ$15B:需要の強さと可視性を強烈に示唆
- ✅ 米州オーガニック売上+46%:供給/実行力が需要に追随できている
- ✅ 利益率23.2%・EPS1.36:高ボリューム×価格/コスト×生産性でレバレッジ
ネガティブ材料(視覚)
- ⚠️ APAC/EMEAは減収:中国鈍化・EMEAソフトが継続
- ⚠️ **受注の“ランピーさ”**を強調し、四半期の受注/バックログ開示を停止(ボラ抑制狙いだが、投資家の透明性は低下)
2) 通期(2025年)実績
| 指標(FY2025) | 実績 | 前年比 | ガイダンス差分 / 補足 |
|---|---|---|---|
| 売上 | $10.2B | オーガニック+26%、ガイダンス比 +$30M | |
| 調整後希薄化EPS | $4.20 | +47% | ガイダンス比 +$0.10 |
| 調整後営業利益 | $2.1B | +35% | ガイダンス比 +$30M |
| 調整後営業利益率 | 20.4% | +100bp | 生産性+価格/コストが主因 |
| 調整後フリーCF | 約$1.9B | +66% | フリーCFコンバージョン 115%(Gioコメント) |
地域トレンド(FY2025)
- Americas:+41%(強い)
- APAC:+18%
- EMEA:-2%(停滞)
3) 2026年ガイダンス(通期・1Q)
通期2026ガイダンス
| 指標(FY2026E) | ガイダンス(中間値) | 成長率/前年差 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 売上 | $13.5B | オーガニック+28% | 地域:米州「高30%」、APAC「中20%」、EMEA「横ばい〜マイナス中一桁」 |
| 調整後営業利益 | $3.04B | ||
| 調整後営業利益率 | 22.5% | +210bp | レバレッジ+価格/コスト、同時に能力/技術へ投資 |
| 調整後希薄化EPS | $6.02 | +43% | |
| 調整後フリーCF | $2.2B | +17% | 税負担増+CapEx増が逆風 |
1Q2026ガイダンス
| 指標(1Q2026E) | ガイダンス(中間値) | 成長率/前年差 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 売上 | $2.6B | オーガニック+22% | 米州「高30%」、APAC「低20%」、EMEA「-中20%」 |
| 調整後営業利益 | $495M | +47% | |
| 調整後営業利益率 | 19% | +250bp | |
| 調整後希薄化EPS | $0.98 | +53% | |
| 関税影響 | 1QのExit rateで“実質的に相殺済み” | CFOコメント |
4) 経営陣の戦略コメント
- 受注・バックログ開示方針変更:受注は「ランピー」で四半期開示が過度なボラを生むため、今後は四半期で受注・受注見通し・バックログを公表しない。ただし10-Kで通年の売上とバックログの履歴開示は継続。
- 価格:2025年は「インフレ超え」の価格、2026年も同様に有利見込み。
- CapEx:2026年は売上比3〜4%へ引き上げ(歴史的には2〜3%台)。能力増強は「大きな一発」ではなく小さな意味あるステップを積み重ねる思想。
- バックログの“年齢(消化期間)”:大口案件中心に顧客が求めるリードタイムは12〜18か月。2025年後半〜4Qの受注が特に強く、結果として2027年側にも押し出される(2026年のカバーは十分)。
- サービス(ライフサイクル):受注成長 +25%超。フィールド人員は約5,000人に接近。差別化要因として継続増強。
- 流体管理(液冷/冷水系)強化:買収(社名はトランスクリプト上は判別不能)で一次/二次の流体系をエンドツーエンド化。顧客価値として「サーマルスロットル減少、計算スループット向上、効率改善、ラックあたり数百万ドル級HWのダウンタイムリスク低減」を強調。
- 技術ロードマップ:シリコン企業などエコシステムと協働し、2〜3年先を見て開発。顧客とは「一緒にアーキテクトする」立場を強調。
- 冷却ミックス見通し:高温運用でチラーが減る可能性は認めつつも、熱排出(heat rejection)は不可欠、データセンター内には低温要求ロードも混在し、ハイブリッド化で複雑性はむしろ増す認識。CDUは長期で残る見立て。
質疑応答ハイライト
1) 受注金額/メガワットあたりTAM(JPMorgan:Tusa)
Q: これまでの「$3.0〜$3.5M/メガワット」の枠組みは上振れしている?
A(Gio): 現状はその枠組みを継続。技術進化で複雑性は増しており、TAM/メガワットにはプラス方向だが、現時点で上振れを断定するのは時期尚早。数か月後の重要テーマ。
2) CapExの増分が支える将来売上規模(JPMorgan:Tusa)
Q: CapEx増(例:+ $100M)でどれくらいの売上能力(倍率)を支えられる?
A(Gio): CapExを売上比で見るのが適切。2〜3%→3〜4%(約3.5%)へ上げることが成長トラクションに連動。能力増強は「大きな段差」ではなく段階的に前倒しで積み上げ。
(※明確な「倍率」は提示せず)
3) 4Q受注が“異常に大きい”理由(Melius:Davis)
Q: 年末の駆け込み、値上げ前の前倒しなど特殊要因は?巨大案件があった?
A(Gio): 価格など不自然な要因はない。市場需要の反映であり、スケールで供給できるVertivへの信頼が背景。大口は複数あったが、「異常」ではなく案件大型化は市場の流れ。ただし受注のタイミングはランピー。
補足(CFO): システムレベル思考がより大きな受注につながっている。
4) バックログを売上/EPSに変えるボトルネック(Evercore:Daryanani)
Q: 2026〜27でバックログを売上化するためのボトルネック/重点施策は?
A(Gio): すでに継続して取り組み中。
- (1) CapExによる能力拡張(新拠点立上げ含む)
- (2) 既存拠点の生産性向上で出力を増やす
サプライチェーンとも密に連携し、バックログ消化を実行。
補足(CFO): CapExはすでに「進行中」で、ガイダンス達成に必要な能力を把握済み。
5) EMEA(許認可など)と中国(競争環境)—Vertical Research:Sprague
Q(欧州): 許認可ボトルネックなど、現地環境は改善?
A(Gio): 魔法のように一気に解決ではないが、投資加速の空気が強く、既存パイプラインの販売サイクルが加速。例としてNordicsが動きやすい。北米集中の意思決定が、北米外にも投資が必要という認識へ。
Q(中国): AI競争で中国が遅れるとは思えない。西側プレイヤーが入りにくくなっている?
A(Gio): それよりも市場需要自体が弱い局面。特定プレイヤー排除というより一般的な市場状況。Vertivは中国で強い立場で、シリコンに依存しない(agnostic)。
6) 顧客との関係がもたらす将来アーキ可視性・R&D先行(Morgan Stanley:Snyder)
Q: 顧客との深い関係で、将来アーキの可視性はどれくらい?R&Dはどれくらい前から?
A(Gio): エコシステム(例:シリコン企業)との協働が重要で、2〜3年先を見てロードマップ策定。顧客とは「指示される」のでなく、一緒にアーキテクトして最適解を作る役割を持つ。
7) SmartRun等のシステム受注、バックログ消化期間が長い理由(Wolfe:Coe)
Q: SmartRunの成功・シェアは?バックログが通常9か月→約15か月に見えるが?
A(Gio):
- バックログ年齢:大口は12〜18か月リードタイムが一般的。2025年後半、とくに4Qの受注が強く、結果として2027年に押し出される。市場が急に変わったわけではなく受注タイミングの結果。
- システム化:One Core/SmartRunの採用が進む。システムとは単なる統合でなく、電力系・熱系を含む全チェーンを設計して最適化すること。
8) サービス人員・組織の拡大(BofA:Obin)
Q: サービスが差別化。サービス人員は?今後の方向性は?
A(Gio): フィールド人員は5,000人に急接近。納入能力と同様にサービス能力も追随させる。インストールベース増とサービス成長(コミッショニング等)に合わせ、ローカルで対応できる体制と技術注入を続ける。
補足(CFO): 重工業出身としてもサービスは“スーパーパワー”。インストールベースで伸ばせる。
9) 2026年もバックログは増えるか/CapExレンジの持続(Deutsche Bank:DeBlase)
Q: 2026年もYoYでバックログ増を期待?CapEx 3〜4%は当面続く?
A(Gio): 受注を詳細にガイドはしないが、既に示した方向性として受注は増える見立てで、バックログも方向として積み上がると考える。
A(CFO): 正常水準は**2〜3%**を志向。2026年は高めだが、2027年は市場を見て(現時点で数値は出さない)。
10) 前受け/繰延収益とワーキングキャピタル(Barclays:Mitchell)
Q: 2025年の運転資本が大幅なキャッシュ源泉。4Qの受注が前受けを押し上げた?2026年も受注増なら再び源泉では?
A(CFO): スライドは「前年比で**$80M低下**」だが、運転資本はプラス(改善)で、前年差でプラスが小さくなる意味。前受けは受注タイプ/ミックスに左右される。4Q→3Qの増加に影響はあり得るが、歴史と比べて大きく逸脱しているとは言えない。
11) 冷却方式のミックス変化(Goldman:Delaney)
Q: 高温運用でチラー不要論、別方式でCDU代替論など。冷却ミックスとコンテンツ/MWは?
A(Gio):
- 技術進化はコンテンツ面で追い風。
- 高温運用が可能でも熱排出は必要。同一DC内で低温要求ロードもあり、ハイブリッド冷却が重要。
- 気候/ロード/レジリエンス設計で必要設備は変わる。
- 高温最適の**「TRIM cooler」(高温最適チラー+柔軟性、フリークーリング最大化)**を重視。
- CDUを別方式で置換は現状見ていない(多くのケースでリスクが大きい)。CDUは長期で残る見立て。
12) インクリメンタルマージン(Citi:Kaplowitz)
Q: Q1/2026は長期レンジ30〜35%の低め。規模案件で上振れ余地?投資増で抑える必要?
A(CFO): 指摘の通り投資水準が高いため、当面はレンジ低めでガイド。投資が進めば長期的には改善余地。詳細は投資家説明会でも。
A(Gio): 長期トラクションは不変。
13) 生産能力稼働・リードタイム(TD Cowen:Elias)
Q: 既存能力の稼働率、スイッチギア等のリードタイムの変化は?
A(Gio): 余力(“wiggle room”)を持つ設計思想は継続(20〜25%程度の余白を意識する旨)。一部製品でリードタイムがやや伸びたが、全体として顧客が期待するリードタイム範囲内で推移。
14) パイプラインは枯渇していないか/バックログ計上要件(UBS:Mehrotra)
Q: 4Qで受注が大きいとパイプラインが枯渇しそうだが?バックログ計上のハードルは?
A(Gio): パイプラインは枯渇しておらず、QoQで増加。バックログは**法的拘束力のある購入注文書(Binding PO)**のみ。多くは前受けを伴う。
総括
✅ ポジティブ
- ✅ 受注・バックログの水準は異常に強い:ブック・トゥ・ビル2.9x、バックログ$15Bは、少なくとも短中期の需要不安を強く打ち消す材料。
- ✅ 米州の供給実行が伴っている:売上+46%(オーガニック)で利益率も伸びており、「受注だけで売上化できない会社」ではない点は評価できる。
- ✅ ガイダンスが強気かつ定量的:2026年EPS $6.02、売上 $13.5B、営業利益率22.5%と、成長・収益性の両方で“数字を置いた”。
⚠️ ネガティブ
- ⚠️ 最大の懸念は“透明性の後退”:
受注・受注見通し・バックログを四半期開示しない方針は、確かにボラ抑制にはなるが、投資家から見ると成長エンジンの健全性を監視する主要KPIを奪う。
「ボラが嫌だから開示をやめる」は、最悪の場合、ピーク需要やキャンセル/先送りの兆候を見えにくくする効果も持つ。これは強烈に警戒すべき。 - ⚠️ バックログが“12〜18か月”に長期化=需要の強さだけではない:
経営陣は「形は同じ」と言うが、投資家が気にすべきは、- 供給能力が追いつかず納期が伸びている可能性
- 顧客が将来計画を“とりあえずPOで押さえた”だけで、**後で調整(延期・縮小)**されるリスク
の両面。Binding POであっても、実務上の変更・リスケは起こり得る(特にAI/DC投資は景気・資本市場・電力制約の影響を受ける)。
- ⚠️ 地域の脆弱さは残ったまま:
4Q売上はAPAC-9%(オーガニック)、EMEA-14%(オーガニック)。回復“期待”は語るが、売上が戻っていない地域に対して、どの程度確度があるのかは不明。
EMEAは「2H回復」と言い続けやすい構造(先延ばしが可能)で、ここは厳しく見るべき。 - ⚠️ キャッシュの質(前受け依存)を過大評価しない:
4QのCFは前受けが効いた。これは良い面もあるが、ミックス次第で逆回転も起こり得る。2026年の運転資本は「プラスだが前年差で減速」と説明しており、“毎年すごいFCF転換”が続く前提は危険。 - ⚠️ 関税影響“相殺済み”は検証が必要:
「1Q exit rateで相殺」と言うが、関税はルール変更・適用品目・サプライチェーンの迂回コストで再燃し得る。ここも四半期の実績で確認したいが、受注開示停止と同様、外部からの検証難度が上がる。
株価
- 短期:
強烈な受注・ガイダンスで、期待は上方向に働きやすい。特に「米州の実行」「利益率の拡大」「高成長ガイド」は株価モメンタム材料。 - 中期:
リスクは「開示縮小で検証不能になること」「バックログ長期化の意味(能力不足 or 顧客側調整)」「APAC/EMEAの実需回復の遅れ」。
これらが顕在化すると、一度ついた高バリュエーションほど下げがきつくなる典型パターンになり得る。

コメント