台湾セミコンダクター(ティッカー:$TSM)の2025年度第1四半期決算についてまとめます
決算概要
アナリスト予想平均と結果の比較をまとめます。
結果 | 予想 | 判定 | |
---|---|---|---|
EPS | $2.12 | $2.03 | 〇 |
売上高 | $25.53B (YoY +35.3%) | $25.20B | 〇 |
ガイダンス 2025Q2売上高 | $28.8B ($28.4B~$29.2B) | $26.43B | 〇 |
業績ハイライト
売上・利益・成長率
項目 | 金額 | 前期比 | 備考 |
---|---|---|---|
売上高 | NT$5926億(US$188億) | 🔻3.4%(NTドル) 🔻5.1%(USドル) | スマートフォンの季節性が主因。AI関連需要が部分的に補完 |
営業利益率 | 48.5% | 🔻0.5pt | 地震と海外工場の立ち上げが影響 |
粗利益率 | 58.8% | 🔻0.2pt | 地震(0.6ptの影響)+熊本の希薄化開始 |
EPS | NT$13.94 | – | – |
ROE | 32.7% | – | – |
📉 赤字要因: 1月21日の地震と海外工場立ち上げ(熊本)が利益率に影響。
技術別売上構成比
プロセス | 売上構成比 |
---|---|
3nm | 22% |
5nm | 36% |
7nm | 15% |
先端プロセス合計(7nm以下) | 73% |
プラットフォーム別売上構成比(QoQ変化)
プラットフォーム | 売上構成比 | QoQ変化 |
---|---|---|
HPC(高性能計算) | 59% | 🟢 +7% |
スマートフォン | 28% | 🔻22% |
IoT | 5% | 🔻9% |
自動車 | 5% | 🟢 +14% |
DCE(デジタル家電) | 1% | 🟢 +8% |
🟢 HPC・自動車が堅調、スマホ・IoTが減速。
財務・バランスシート
- 現金および有価証券:NT$2.7兆(US$810億)
- 運転資本関連:
- 売掛金回転日数:28日(+1日)
- 棚卸資産日数:83日(+3日)→ 海外工場立ち上げ影響
- 営業キャッシュフロー:NT$6260億
- 設備投資(CapEx):NT$3310億(US$100.6億)
- 配当金支払:NT$1040億(2024年Q2分)
- 社債発行:NT$160億
- キャッシュ増加:+NT$2670億 → 期末残高NT$2.4兆
2025年第2四半期 ガイダンス
指標 | ガイダンス | 備考 |
---|---|---|
売上高 | US$28.4~29.2億 | 🟢 +13% QoQ(Midpoint)、🟢 +38% YoY |
為替レート前提 | US$1 = NT$32.5 | – |
粗利益率 | 57~59% | Midpoint:58%(🔻0.8pt QoQ) |
営業利益率 | 47~49% | – |
税率 | 約20%(Q2)、Q3以降は14~15% | 通年:16~17%見通し |
経営陣コメント・補足
- 海外工場による粗利希薄化:
- 2025年通年で「2〜3%の粗利益率のマイナス影響」見込み。
- 5年間では「初期:2〜3%、後期:3〜4%」まで拡大の見通し。
- 競争力維持に自信:
- 長期粗利益率は「53%以上を維持可能」と強調。
- 2025年設備投資見通し:US$380~420億
- 先端プロセス:70%
- 特殊プロセス・先端パッケージ・テスト等:各10〜20%
- 米国アリゾナ追加投資:
- US$1000億の追加投資計画を発表(合計US$1650億)
- 先端パッケージ工場×2、R&Dセンター、ウエハー工場×3を追加
質疑応答ハイライト
AI関連需要とCoWoS供給能力について
Q(JPMorgan Gokul氏): AI向けCoWoSの需給状況と2026年見通しは?
A(CC Wei氏):
- 昨年は「供給が全く追いつかない」ほどの需要だった。
- 現在は「やや落ち着いているが依然として非常に高い需要」。
- 2026年も 「健全な需要が継続」、供給逼迫はやや緩和見通し。
🟢 ポジティブ要素: AIアクセラレータ関連売上は2025年に「倍増予想」を維持。
米国投資と価格転嫁戦略
Q(JPMorgan Gokul氏): 米国投資加速で利益率がさらに悪化するのでは?価格転嫁は可能か?
A(Wendell Huang/CFO):
- 地政学的柔軟性は顧客にとって価値がある。
- 価格転嫁交渉は継続中で「進展あり」。
- 高い資本集約型ビジネスゆえに高い粗利が必要。
🔴 懸念点: 海外工場起因の粗利希薄化は **「インフレ+関税」**が主因で今後拡大見通し。
地政学リスクと成熟プロセス工場の拡張判断
Q(Goldman Sachs Bruce氏): 地政学リスク(例:中国の制裁)をどう織り込んでいる?
A(CC Wei氏):
- 現時点では 顧客行動の変化なし。
- 四半期見通し・年間見通しにも すでに影響を織り込み済み。
Q: 成熟ノードの工場(日本・欧州)について、過剰供給リスクから縮小は?
A:
- 予定通り進行(減速しない)。
- 日本・欧州向けの成熟ノードは「競合他社にない特殊技術向け」で需給はタイト。
N2、A16プロセス技術と先端パッケージ展開
Q(Laura氏): N3移行でAI向けチップ設計が変化していくか?先端パッケージ(PLPなど)展開は?
A(CC Wei氏):
- AI顧客は TSMCのCoWoS, SoICを積極採用中。
- パネルレベルパッケージ(PLP)は 現在開発中、まず台湾で実装予定。
- A16はN2P比でさらに電力効率・密度が向上、2026年後半量産予定。
米国拠点のR&Dセンターの役割
Q: 米国R&Dは独立開発拠点になるのか?
A:
- 主目的は アリゾナ工場の技術支援・独立運営体制の確立。
- 一部「パスファインディング」活動は実施中。
- 長期的には役割拡大の可能性あり(現時点で1000人体制)。
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