スーパーマイクロコンピューター(ティッカー:$SMCI)の2026年度第2四半期決算についてまとめます
- 決算概要
- 業績ハイライト
- 質疑応答ハイライト
- 1) 粗利率の底打ちと改善確度(Loop Capital:Baruah)
- 2) 通期Bの保守性(JPMorgan代行)
- 3) 供給制約と地理別のDCBBS展開(Citi:Merchant)
- 4) DCBBS投資・製品拡張(Goldman:Murphy)
- 5) 粗利率悪化要因の“定量化”要求(BofA:Bhattacharya)
- 6) “NVIDIA参照設計より早い”差別化は続くか(Northland:Chokshi)
- 7) 顧客集中の今後(Needham:Bolton)
- 8) 顧客ミックス(大口 vs 中小)と価格圧力(CJS:Tanwanteng)
- 9) 急増した売上の背景と長期粗利レンジ(Bernstein:Newman)
- 10) 資金繰り・その他損益の上振れ・ファクタリング(KeyCorp:Nispel)
- 総括
決算概要
アナリスト予想平均と結果の比較をまとめます。
| 結果 | 予想 | 判定 | |
|---|---|---|---|
| EPS | $0.69 | $0.49 | 〇 |
| 売上高 | $12.7B (YoY +122.8%) | $10.34B | 〇 |
| ガイダンス 2026Q3売上高 | $12.3B | $10.2B | 〇 |
| ガイダンス 通年売上高 | $40.0B | $36.27B | 〇 |
業績ハイライト
1) 連結業績
✅ ポジティブ:売上はガイダンスを大幅超過、EPSも上振れ
⚠️ ネガティブ:粗利率が大きく低下、顧客集中が極めて高い
| 指標 | Q2 FY26 実績 | 前四半期(Q1 FY26) | 前年同期比 / 前四半期比 | 会社ガイダンス(Q2) |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | $12.7B | (言及あり:QoQ +153%) | YoY +123% / QoQ +153% | $10.0B~$11.0B |
| 売上内訳:遅延出荷分 | 約$1.5B | — | — | — |
| 非GAAP 粗利率 | 6.4% | 9.5% | QoQ -310bp | — |
| 非GAAP 営業費用(額) | $241M | — | QoQ +18% / YoY +6% | — |
| 非GAAP 営業費用率 | 1.9% | 4.1% | QoQ 改善 | — |
| 非GAAP 営業利益率 | 4.5% | 5.4% | QoQ -90bp | — |
| GAAP EPS(希薄化後) | $0.60 | — | — | $0.37~$0.45 |
| 非GAAP EPS(希薄化後) | $0.69 | — | — | $0.46~$0.54 |
| その他損益(純額) | + $26M | — | — | — |
| 税率(GAAP / 非GAAP) | 19.8% / 20.6% | — | — | — |
| 営業CF | – $24M | -$918M | 大幅改善 | — |
| CapEx | $21M | — | — | — |
| フリーCF | – $45M | — | — | — |
経営陣の説明(粗利率低下要因)
- 顧客・製品ミックス(大規模“モデルビルダー”比率上昇で価格交渉力→粗利圧迫)
- 新プラットフォームの大規模出荷開始に伴う生産/立上げコスト
- 輸送・エクスペダイト費用増(成熟化で今後低減見込み)
- 部品不足・価格変動、関税影響
2) セグメント/顧客/地域の集中度
セグメント
| セグメント | Q2 FY26 売上 | 構成比 | 前四半期 構成比 | YoY / QoQ |
|---|---|---|---|---|
| Enterprise Channel | $2.0B | 16% | 31% | YoY +42% / QoQ +29% |
| OEM/Appliance & Large Data Center | $10.7B | 84% | 68% | YoY +151% / QoQ +210% |
顧客集中
- 大手データセンター顧客1社で売上の約63%(Q2)
地域
| 地域 | Q2 FY26 構成比 | YoY | QoQ |
|---|---|---|---|
| 米国 | 86% | +184% | +496% |
| アジア | 9% | +53% | -49% |
| 欧州 | 3% | -63% | -51% |
| その他 | 2% | +77% | +53% |
3) AI構成・成長ドライバー
✅ ポジティブ:成長の中心はAIラックスケール、需要は「前例ないほど強い」と強調
- AI GPUプラットフォームがQ2売上の90%超
- 成長ドライバー:Rack Scale AIソリューションの急速なランプとデプロイ
4) DCBBS(Data Center Building Block Solution)の位置づけ
✅ ポジティブ:時間価値(TTD/TTO)と総所有コスト最適化で差別化、利益率が高い
⚠️ 注意:売上規模はまだ小さい(会社も明言)
- FY26上期(直近6か月)で DCBBSが利益の4%を占めた(売上寄与は「小さい」と明言、具体値は非開示)
- 2026年末(暦年)までに利益寄与が“少なくとも2桁”へ加速見込み
- 構成要素(約1年で10以上に拡大):CDU、熱交換器、チルドドア、パワーシェルフ、バッテリーバックアップ、水塔/ドライタワー、高速スイッチ、DC管理ソフト/サービス等
- 追加予定:変圧器、次世代発電機、エネルギーバックアップ/系統代替関連デバイス等
DCBBSのマージン(経営陣コメント)
- 「粗利・純利ともに大幅に高い」「20%超」と説明(※文脈上はDCBBSのマージン水準を指す趣旨)
5) コスト/資本政策・財務体質
✅ ポジティブ:運転資本の回転は改善(CCC大幅短縮)
⚠️ ネガティブ:在庫急増、ネットデット、増資(借入)依存の拡大
- 期末現金:$4.1B
- 有利子負債(銀行借入+転換社債):$4.9B → ネットデット $787M(前四半期 $579M から悪化)
- 在庫:$10.6B(Q1の$5.7Bから急増)—「Q3出荷強含みに備える」
- CCC:123日 → 54日へ大幅改善
- 在庫日数:105日 → 63日
- DSO:43日 → 49日
- DPO:26日 → 58日
資金調達(成長資金)
- 米国:$2.0Bの担保付きリボルビング(CFベース)
- 台湾:約$1.8Bの担保付きリボルビング(1月クローズ)
- 売掛金ファクタリング:Q2中は未使用、その後は使用開始
- 追加で5B超の資金アクセスがあると説明
6) ガイダンス
✅ ポジティブ:売上ガイダンスを上方(“最低”表現)
⚠️ ネガティブ:通期$40Bは保守的と言うが、供給制約・コスト上昇が前提に入っている
Q3 FY26(会社見通し)
| 指標 | ガイダンス |
|---|---|
| 売上高 | 少なくとも $12.3B |
| GAAP EPS(希薄化後) | 少なくとも $0.52 |
| 非GAAP EPS(希薄化後) | 少なくとも $0.60 |
| 粗利率 | Q2比 +30bp(= 6.4% → 約6.7%方向) |
| GAAP Opex | 約**$354M**(うちSBC $74M) |
| その他損益 | 約 -$22M(純費用) |
| 税率 | GAAP 19.6% / 非GAAP 20.2% |
| 希薄化株式数 | GAAP 684M / 非GAAP 699M |
| CapEx | $70M~$90M |
FY26通期(会社見通し)
- 売上高:少なくとも $40B(Charles:保守的。供給逼迫・価格上昇を織り込み)
質疑応答ハイライト
1) 粗利率の底打ちと改善確度(Loop Capital:Baruah)
Q:前回「12月期が粗利率の低水準」と言っていたが、今後は改善するか?顧客ミックス悪化は続く?
A(Charles):
- 顧客ミックスは「四半期ごとに改善」
- GP300が新しく、エクスペダイト輸送費が大きかったが、成熟化で「劇的に減る」
- 関税影響も改善、DCBBS増加もプラス
- 「粗利率は四半期ごとに改善」見通し
Q(追加):Opex比率が過去にない水準(<2%)。構造的なOpexレバレッジ局面か?
A(Charles):
- 規模の経済でコスト改善 → 粗利・営業利益率改善へ
- DCBBSでサービス/ソフト/インフラサービスも伸び、利益に寄与
2) 通期Bの保守性(JPMorgan代行)
Q:$40Bから逆算すると4Q減速が示唆される。保守的に置いただけか、実際に減速兆候か?
A(Charles):
- 「最低$40Bは保守的」
- DCBBSが顧客獲得を加速、成長は続くという見立て
Q(追加):DCBBSは利益の4%と言うが、売上寄与は?2桁利益寄与は粗利率にどう効く?
A(Charles):
- 売上は「まだ小さい」が、利益率が高いため利益の4%に寄与
- 今後急拡大、利益はDCBBSで伸びると説明(数値は非開示)
3) 供給制約と地理別のDCBBS展開(Citi:Merchant)
Q:$40Bは供給制約で抑えられているのか?供給が潤沢なら上振れ余地は?
A(Charles):
- 部品価格上昇も織り込み保守的に$40B
- 供給逼迫が改善すれば「$40B超もあり得る」という含意
Q(追加):地域別売上の落ち込みもある中、DCBBSの地域展開は?
A(Charles):
- DCBBSは「世界中で需要」
- 計算/ストレージ/スイッチ/冷却/バッテリー/エネルギーまで含む“ワンストップ”として評価、支援体制を拡充
4) DCBBS投資・製品拡張(Goldman:Murphy)
Q:DCBBSの浸透に必要な投資とGo-to-marketは?
A(Charles):
- 開発開始は約12か月前、継続投資済み
- 現在約10アイテム、今後数か月~数四半期で3~5アイテム追加
- モジュール化で構築・運用・保守・スケールが容易に
Q(追加):DCBBSのマージンは従来(大規模クラウド/GPUaaS)と比べて?
A(Charles):
- **「20%超」**で「はるかに高い」と明言(ユニークで先行者、プリデザイン/プリバリデート/最適化が理由)
5) 粗利率悪化要因の“定量化”要求(BofA:Bhattacharya)
Q:輸送、部材コスト、不足、顧客サポート投資などの粗利影響を定量化できるか?Q3に織り込む影響は?
A(David):
- 内訳は開示しない
- ただし各項目でコスト上昇はあった、過去1年で新技術の量産準備で増加
Q(追加):不足している部材はどこ?コスト増は需要を壊しているか?DCBBSの顧客像は?
A(Charles):
- 不足は「需要が強すぎることが原因」(供給能力低下ではない)→むしろ良い兆候
- コスト影響はあるが「致命的にはならない」というニュアンス
- DCBBSは規模を問わずデータセンター構築者全員が対象、ワンストップでTTD/TTO改善が価値
6) “NVIDIA参照設計より早い”差別化は続くか(Northland:Chokshi)
Q:DLCやドライ冷却塔など、参照設計より先行した。今後も1世代早く投入し続けるブランド戦略か?
A(Charles):
- NVIDIAと密接に連携しつつ、強いエンジニアリングで
- 今後も「6か月早くが難しくても3~4か月先行」は可能、顧客のTTO短縮に大きい
Q(追加):10%超顧客が上振れ要因か?次四半期も続く?Datavault契約の進捗は?
A(Charles):
- 基盤強化で新規/既存とも拡大、売上は急成長しており「10%超かは予測困難」
- Datavaultについて明確な進捗回答は実質なし(一般論に留まる)
7) 顧客集中の今後(Needham:Bolton)
Q:Q2は顧客1社で63%。下期は分散するか、それとも継続か?
A(Charles):
- 顧客の前倒し/後倒しで予測は難しい
- ただ「大口顧客が増えて分散が進む」という方向性
- DCBBSやソフトが価値を押し上げる
Q(フォロー確認):見通しでは今後数四半期で分散進む?
A(Charles):Yes(ただし成長資金の確保があればさらに伸ばせる、という資金調達志向も示唆)
Q(追加):Vera Rubin(NVIDIA)/Helios(AMD)の受注状況は?
A(Charles):
- 強い関心、一部コミットメントあり
- ただし供給パートナー側の準備次第、可能になり次第迅速に出荷
8) 顧客ミックス(大口 vs 中小)と価格圧力(CJS:Tanwanteng)
Q:将来は小口比率が上がるか?大口は価格交渉力が強い。
A(Charles):
- 企業(エンタープライズ)を積極拡大し分散を重要方針に
- 大口と多数のエンタープライズの両方を狙う
Q(追加):Vera Rubin/800Vデータセンター化で差別化余地は?
A(Charles):
- 参照設計をベースに、DCBBSで最適化(構築速度、信頼性、管理容易性、コスト/エネルギー)
- ただし詳細は「時期尚早」で踏み込まず
9) 急増した売上の背景と長期粗利レンジ(Bernstein:Newman)
Q:売上急増は“注文の追いつき”か、“価格攻勢でシェア奪取”か?長期粗利は低水準が定着?以前の高シングル~低ダブルに戻る?
A(Charles):
- 大口拡大とエンタープライズ拡大を両睨み
- 粗利率・純利率をできるだけ早期に2桁へ持っていきたい(目標発言)
A(David): - 最新技術を最速で提供する“プレミア”としての地位が広がり、顧客基盤拡大がマージンに繋がるという論旨
10) 資金繰り・その他損益の上振れ・ファクタリング(KeyCorp:Nispel)
Q:成長に向けた運転資本の考え方は?その他損益がガイドより+$50M程度上振れた要因は?
A(David):
- 上振れは現金増による利息収入増
- ただし大量PO(言及:$13B超の発注残の存在)対応で売掛/在庫が増え、資金需要が大きい
- $2B + $1.8Bのリボルバ、売掛ファクタリング等で**> $5Bの追加資金アクセス**
Q(追加):ファクタリング/証券化は今四半期使った?63%顧客は以前の10%顧客か?
A(David):
- Q2(12月期)では未使用、その後使用
- 顧客は繰り返し取引が多い、としか言えず詳細は10-K/10-Q参照
- 併せて希薄化株式数の訂正:
- GAAP希薄化株式数 663M → 694M
- 非GAAP 677M → 709M
総括
結論:売上成長は異常に強いが、収益の質とリスク構造は“非常に危うい”。数字の派手さに騙される局面ではない。
✅ ポジティブ材料
- 売上$12.7B(YoY+123%)、ガイダンスを大幅超過。需要が強いこと自体は事実。
- **Opex比率1.9%**まで低下し、規模拡大によるレバレッジが出ている。
- DCBBSは「利益率>20%」と明言され、うまく伸びれば利益率改善の“数少ない”道筋になり得る。
- 供給不足の原因を「需要急増」と説明しており、市況の追い風は継続している可能性。
⚠️ ネガティブ材料
- 粗利率6.4%は危険水域
- AIサーバーで売上が爆増しても、粗利がここまで薄いのは「価格交渉力が顧客側にある」ことの裏返し。
- “輸送費・立上げ・関税”は改善すると言うが、根本は顧客ミックス(大口の値決め)。この構造が続くなら、改善は限定的になり得る。
- 顧客集中(1社63%)は異常
- 1社の調達タイミング、検収、資本政策、在庫方針次第で業績がブレる。
- 経営陣は「分散する」と言うが、具体的な“いつ/どの程度”の定量がない。投資家はここを最も警戒すべき。
- 在庫$10.6Bの急増は“賭け”
- 「Q3強いから積んだ」という説明だが、需要や顧客のスケジュールが動けば在庫評価・値引き・キャッシュ悪化に直結。
- 実際、営業CFはまだマイナス(- $24M)。改善したとはいえ、規模に対してキャッシュ創出が弱い。
- 成長資金は借入でつないでいる
- 現金$4.1Bに対し負債$4.9Bでネットデット。
- リボルバ・ファクタリングで資金アクセスは増えたが、これは裏を返せば運転資本が膨張し続ける前提。需要が少しでも鈍ればレバレッジが効いて悪化する。
- DCBBSの“夢”はまだ数字が薄い
- 利益4%寄与は良いが、「売上は小さい」と明言。
- “2026年末に利益2桁寄与”も、結局は採用速度・供給能力・競合追随次第。現時点では検証可能な開示が不足。
株価
- 短期:ガイダンス上振れ(Q3売上最低$12.3B、通期最低$40B)と需要の強さが材料になりやすい。一方で粗利率の低さが重し。
- 中期:焦点は「粗利率が本当に戻るのか」「顧客集中が解けるのか」「在庫と資金繰りが破綻しないか」。この3点のどれかが崩れると下落圧力が一気に強まる。
- 会社は“2桁マージン”を口にしたが、現状(粗利6.4%)とのギャップが大きすぎ、言葉だけで織り込むのは危険。

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