トランプ大統領の経済政策は1970年代のニクソン政権と重なる部分が多く見られます。本記事では、1971年のニクソンショックの背景と影響を振り返りつつ、現トランプ政権との共通点まとめます。
ニクソンショックとは何か?
1-1. 背景:ブレトン・ウッズ体制の終焉
1944年に確立されたブレトン・ウッズ体制は、世界経済の安定を目指し、米ドルを基軸通貨として各国通貨をドルに固定し、ドルは金と交換可能(1オンス=35ドル)という仕組みでした。
しかし、1960年代末になるとアメリカはベトナム戦争と「偉大な社会」政策のために多額の財政支出を行い、ドルが過剰に発行されるようになります。その結果、各国は「ドルの信用」に疑問を持ち始め、金との交換を求めてアメリカにドルを突き返す動きが強まりました。
1-2. 歴史的決断:金とドルの交換停止
1971年8月15日、ニクソン大統領はテレビ演説で次の3点を発表しました:
- 金とドルの交換を停止(ドルの金兌換を終了)
- 輸入課徴金(関税)10%の導入
- 賃金・物価の90日間凍結
この「ニクソン・ショック」により、ドルは金という裏付けを失い、固定為替制度は崩壊。各国通貨は市場原理によって変動する「変動相場制」に移行していきます。この出来事は、為替市場の構造を根本から変えた歴史的転換点でした。
トランプ政策に見る「ニクソン的発想」
2-1. 貿易政策:保護主義の再来
2024年に再選されたトランプ大統領は、ニクソン政権と同様にアメリカ第一主義を掲げ、強硬な貿易政策を展開しています。
- 中国製品への60%以上の関税を検討
- 全輸入品に一律10%の関税を課す構想を継続中
- 国際協調を軽視し、単独行動を強調
こうした保護主義的政策は、ニクソン時代の輸入課徴金と極めて類似しており、貿易相手国との摩擦を招いています。
2-2. 通貨政策:ドル安志向が明確に
トランプ氏は大統領就任以降、「ドル高は輸出企業に不利」と繰り返し主張しており、2025年も同様のスタンスを維持。
為替政策に対して政治が強く介入する姿勢は、通貨の信認に大きな影響を及ぼす要素です。
2-3. スタグフレーション再来の懸念
ニクソン時代の政策が招いた「スタグフレーション(景気停滞×物価上昇)」と同様のリスクが、現在の米経済にも見え始めています。
- 関税の引き上げ → 輸入物価上昇 → インフレ圧力
- FRBへの利下げ圧力 → 実質金利の低下 → 資金流出・ドル安
- 実質賃金の伸び悩み → 内需低迷 → 景気減速
このような状況下では、政策の一つひとつが市場に与える影響がより大きくなります。
まとめ
1971年のニクソンショックは、経済制度の根本的な転換点でした。そして今はトランプ大統領による「政策主導型相場」の時代が再び始まっています。
今後の為替や株式市場では、テクニカルな材料に加え、「政策決定とその波及効果」を的確に読み取る力がますます重要になっています。
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