皆さんは”レバナス”という言葉を耳にしたことはあるでしょうか?今回は2021年後半から2022年前半にかけてブームとなった悪名高き”レバナス”という商品について紹介します。
レバナスとは?
レバナスとは、米国株価指数であるNASDAQ100に連動し、基準価額が2倍程度の値動きになるように設計されたレバレッジ型投資信託のことです。レバレッジ効果によって高いリターンを狙える反面、下落相場では損失が大きくなるリスクもあります。また、基準価格をベースに値動きを大きくするという設計上、減価という落とし穴があり、長期保有に向かない悪質な商品設計となっています。
何が起きた?
株クラ界隈で起きていたこと
2021年後期頃、下落相場を経験したことのない若いインフルエンサーや初心者投資家の中で大ブームとなりました。ツイッター上でも、レバナスの長期保有について夢を語る初心者投資家が大量発生していたのを思い出します。
これに対し、警鐘を鳴らしているインフルエンサーも散見されましたが、初心者の彼らは下落が来ても一時的なものだと妄信し、聞く耳を持ちませんでした。それどころか、2022年初から現実に本格的な下落相場に入っているにもかかわらず、”魔人ホールド”などという滑稽な呪文を呟きながら買いポジションを取り続けていったのです。
相場のド天井でレバナスに振り込んでしまった彼らは、通常の2倍速で下落相場に突っ込んでしまい、結果的に大きな損失を被ることになります。騙される方が悪いので、同情の念は沸きません。
株安の背景
2021年後期と言えば、上昇の止まらないインフレ指標の結果を受け、FRBが金融政策の誤りを認め、金融引き締めを正に来年から実施していこうとしているタイミングでした。加えて2022年は、ロシア-ウクライナ戦争もインフレに拍車をかけ、1980年代以降で最速のスピードで利上げが行われることになりました。
金融引き締めを行うのですから、ナスダック100に含まれるような成長企業は、金利上昇の逆風を受け企業成長が鈍化していくことは火を見るよりも明らかです。
実際にナスダック100は翌年の年初からそれを織り込み始め、10月の底値まで僅か1年で30%以上の大暴落を見ることになりました。これに2倍のレバレッジを掛けているのだとしたら…
株価と関心度
検索頻度を見る
以下は2021年1月~2024年2月現在までの”レバナス”というキーワードのGoogle検索頻度を視覚化したものです。
2021年10月を起点に急速に注目度が集まり、2022年1~2月をピークに下落。その後2022年内に何度かスパイクしながら下降を続け、2023年は底を這っている様子が分かります。
ではこれを実際のナスダック100チャートと比較してみましょう。
2022年1月をピークに2023年までスパイクしながら下落している様子は、まさにレバナス購入者の期待と逆相関にあると言えるでしょう。特に興味深いのは、2023年1月頃、レバナスに対する関心が底辺レベルまで落ちた時に、相場も底入れしているという点です。その後、ナスダック100は2021年末の史上最高値を更新するほどの空前のブル相場に突入していますが、面白いことにレバナスに関する言及がほとんど増えていません。
考察
キーワード検索頻度と株価の時系列から察するに、以下のような初心者投資家たちの行動があったと推測されます。
- 2021年9月~2022年1月:レバナスを購入
- 2022年1月~3月:下落は一時的なものと妄信し、”魔人ホールド”
- 2022年5月:リバウンド後、株価が垂れてきたのを見てチャンスと思い追加購入
- 2022年7月:大半の初心者はここまでで損切、場合によっては株式市場から退場
- 2022年9月:8月のサマーラリー後に株価が垂れてきたのを見て…懲りずに購入
- 2022年10月:最後の下落に巻き込まれ、ポジション損切
- 2023年1月:ブル相場が始まっているが、既に株式市場から退場中で買えていない
やることが全て裏目に出ている様子が分かり、とても示唆に富む内容だと思います。
このような解析は、裏を返せば逆指標として利用できることを意味します(詳細はこちら)
まとめ
レバナスブームは知識のない初心者ほど簡単に騙されてしまう典型例だったと思います。正直なところ、私も投資を始めたのが2021年だったら引っかかっていたかもしれません。投資資金の少ない初心者程、このようなレバレッジ商品に手を出してしまう傾向があります。レバレッジを使った取引自体は、短期的な局面にはとても有効な手段になりえますが、投資信託のように資金が拘束され、かつ手数料まで取られる商品に手を出すなど言語道断です(CFDや先物をやればいいのに…)。一発逆転の博打などせず、自己投資を行い入金力を高め、身の丈に合った投資手法で株式投資を楽しんでいきましょう。
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