JPモルガン・チェース(ティッカー:$JPM)の2025年度第4四半期決算についてまとめます
- 決算概要
- 業績ハイライト
- 質疑応答ハイライト
- 1) ステーブルコイン規制:預金流出リスクと「並行銀行システム」懸念
- 2) 口座数は増えるのに預金が伸びない理由
- 3) 2026のフィー見通し:どこが強いのか(ただしガイダンスは避ける)
- 4) 効率性指標 vs ROTCE:毎年の正のオペレバは追わない
- 5) Apple Card買収:狙いと統合に2年かかる理由
- 6) クレジットカードAPR上限(価格統制)の影響:消費者に“信用供給縮小”が直撃
- 7) 2026マクロとリスク(Jamieの見立て)
- 8) NIIを支えるバランスシート前提(ローン・預金の内訳)
- 9) NBFI与信の増加背景:規制・裁定とレバレッジドレンディング指針
- 10) Markets NIIがbn(24)→.3bn(25)→bn(26E)へ:戦略ではなく金利感応
- 11) 2026経費ガイダンス(前年差+約bn)の中身:詳細開示は限定
- 12) 資本水準:過剰資本は十分、焦点は“資本だけではない”
- 13) 2026ローン需要:依然カード中心、ホールセールは“控えめに前向き”
- 14) 消費者預金競争(利下げ局面)
- 15) AWMの持続性と成長機会
- 総括
決算概要
アナリスト予想平均と結果の比較をまとめます。
| 結果 | 予想 | 判定 | |
|---|---|---|---|
| EPS | $5.23 | $4.86 | 〇 |
| 売上高 | $46.77B (YoY +6.9%) | $46.25B | 〇 |
業績ハイライト
1) 4Q25 連結決算サマリー(全社)
4Q25のポイント:市場部門の好調と資産運用手数料増が増収を牽引。一方でApple Card関連の引当(CCBで▲$2.2bn)が純利益を押し下げ。
| 指標 | 4Q25 | 前年同期比 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 純利益(Net Income) | $13.0bn | — | Apple Card前方購入コミットメントに伴う引当 $2.2bn を含む |
| EPS | $4.63 | — | 同上 |
| ROTCE | 18% | — | 引当影響込み |
| 売上(Revenue) | $46.8bn | +7% | Markets増収、資産運用手数料増、オートリース収入増 |
| 経費(Expenses) | $24.0bn | +5% | ボリューム/収益連動費・報酬増(オフィス採用等)。FDIC特別賦課金の戻入が一部相殺 |
NII(Markets除く)増減要因(コメントベース)
- ✅ プラス:全社的な預金残高増、カードのリボ残高増
- ❌ マイナス:金利低下の影響が大きく相殺
2) 通年(FY25)実績(「重要項目」除外ベース)
経営陣は「2025年には重要項目がいくつかあった(注記に列挙)」とした上で、それらを除外した実力値を提示。
| 指標(重要項目除外) | FY25 |
|---|---|
| 純利益 | $57.5bn |
| EPS | $20.18 |
| 売上 | $185bn |
| ROTCE | 20% |
3) 資本・RWA(Apple Cardの影響が極めて大きい)
| 指標 | 4Q25 | 前期比 | 補足 |
|---|---|---|---|
| CET1比率(標準化) | 14.5% | ▲30bp | 純利益を株主還元とRWA増が上回る |
| 標準化RWA | — | 増加 | 貸出増(ホールセール&リテール)+Apple Card |
| Apple Card:標準化RWA寄与 | 約$23bn | — | 前方購入コミットメント関連 |
| Apple Card:先進的RWA寄与 | 約$110bn | — | 期末時点「想定利用残高+未実行枠」の合算ベース |
| 先進的RWAの見通し | 近く約$30bnへ低下 | — | 一時的に高水準と明言(SCBが2.5%フロアで先進法RWAの重要性増) |
✅ ポジティブ:CET1は14.5%と依然高水準
⚠️ ネガティブ/要注意:Apple Cardが先進法RWAを一時的に巨額押し上げ($110bn)。資本運営の“見かけの余裕”に錯覚が出やすい。
4) セグメント別(4Q25)
CCB(Consumer & Community Banking)
| 指標 | 4Q25 | 補足 |
|---|---|---|
| 純利益 | $3.6bn | Apple Card引当 $2.2bnの影響込み |
| 純利益(引当除外) | $5.3bn | 実力値として提示 |
| 売上 | $19.4bn | +6% YoY(カードのリボ増によるNII、B&WMの預金マージン改善) |
消費者動向(マネジメント見解)
- 「消費者・中小企業は引き続きレジリエント」
- 「センチメントは弱いが、データは概ね過去の正常レンジで劣化は見ていない」
- デビット/クレジット販売額:+7% YoY
フランチャイズ拡大(FY25)
- 純増チェック口座:+170万
- 新規カード口座:+1,040万
- WM:デジタル&アドバイス双方で過去最高の世帯数(record households)
✅ ポジティブ:口座獲得が異様に強い(チェック170万純増、カード1040万新規)
⚠️ ネガティブ/要注意:口座増の割に預金成長が鈍い(後述:利回り追求フローが完全に止まっていない、残高/口座の伸びが遅れている)
CIB(Corporate & Investment Bank)
| 指標 | 4Q25 | 前年同期比 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 純利益 | $7.3bn | — | |
| 売上 | $19.4bn | +10% | Markets、Payments、Securities Servicesが牽引 |
| IB手数料 | — | ▲5% | 前年の強い比較+案件が2026年へずれ込み |
Markets内訳(YoY)
- FICC:+7%(証券化商品・金利・新興国通貨が強い、ただしクレジットトレーディング弱含み)
- Equities:+40%(特にプライムが好調)
見通し(経営陣)
- 2026年は「強い顧客エンゲージメントとディール活動」を予想
- パイプラインがそれを裏付け
✅ ポジティブ:Equitiesが+40%と突出、パイプラインも前向き
⚠️ ネガティブ/要注意:IB手数料は▲5%で「26年にずれた」説明。“ずれ”が戻る保証はない(総括で指摘)
AWM(Asset & Wealth Management)
| 指標 | 4Q25 | 前年同期比 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 純利益 | $1.8bn | — | |
| プレタックス・マージン | 38% | — | |
| 売上 | $6.5bn | +13% | 運用/WM手数料(市場水準上昇・強い流入)、成功報酬増 |
フロー
- 長期純流入:$52bn(四半期) / $209bn(通年)
- 流動性(Liquidity)純流入:$105bn(四半期) / $183bn(通年)
- クライアント資産の純流入(通年):$553bn(record)
✅ ポジティブ:流入が圧倒的(通年で記録的)+マージン38%
⚠️ 要注意:市場要因(評価益)への慎重姿勢も示唆(「市場上昇ドライバーは慎重」)
Corporate
| 指標 | 4Q25 |
|---|---|
| 純利益 | $307mm |
| 売上 | $1.5bn |
5) NBFI(ノンバンク金融機関)向け与信:定義・規模・リスク認識
- 規制上のNBFI定義より狭い社内定義(「NBFIが最終借り手へ貸すローンを担保にしたエクスポージャー」に焦点)
- その結果、例:PEファンドのサブスク・レンディング等を除外
- 社内定義での残高:約$160bn(4Q時点)
- 7年間で大きく増加(定義差に関わらず増加は顕著)
- 損失履歴(2018年以来):チャージオフ1件(「詐欺のような事案」)
リスクの見立て(経営陣)
- 信用補完が厚く、伝統的な信用サイクルが来ていないため損失が出ていない
- 今後の損失顕在化は
- 追加の不正/詐欺型、または
- 信用補完を吹き飛ばすほどの深いリセッション
- その場合、業界としてはNBFIより伝統的なエンドボロワー向け与信の方が大きな懸念になり得る
⚠️ 要注意:「損失が少ない=安全」ではなく、サイクル未到来を認めた上で“深い不況で補完が剥落した時”を想定している。
6) 2026 ガイダンス(会社計画)
NII
| ガイダンス | 2026E | 補足 |
|---|---|---|
| NII(Markets除く) | 約$95bn | 先物カーブは2回利下げ想定。カードは成長するが、リボ正常化の追い風は一巡。預金は「緩やかに増」 |
| 総NII | 約$103bn | Markets NIIが約$8bnへ増(利下げで調達コスト低下)※「NIRで概ね相殺」と説明 |
経費
| ガイダンス | 2026E |
|---|---|
| 調整後経費 | 約$105bn |
- 経費増は「競争が激化する環境で必要な投資」
- 2026単年では増加が大きいが、財団拠出・FDIC特別賦課金などを調整すると見え方は変わる、という提示
クレジット(カード)
| 指標 | 2026E |
|---|---|
| カードNCO率 | 約3.4% |
- 「消費者の底堅さ」と「延滞トレンド良好」を根拠に“好ましい”見立て
✅ ポジティブ:NII見通しを維持、カードNCO 3.4%想定
⚠️ ネガティブ/要注意:経費$105bnは投資の名の下に固定費化しやすい。さらに、Markets NII増は「NIRで相殺」と言うが、投資家の理解を阻害しやすい複雑性が残る。
質疑応答ハイライト
1) ステーブルコイン規制:預金流出リスクと「並行銀行システム」懸念
Q(Schorr):利息付きステーブルコインの“抜け穴”が塞がれない場合、$6.6tnの銀行預金がリスクとの推計も。JPM含め全銀行に影響?銀行システムへの脅威は?
A(Barnum):
- JPMはブロックチェーン領域に長く関与(Conexus等、トークン化MMFも)。CCBでもCoinbase提携で暗号資産購入を可能にするなど、技術革新は注視し関与。
- 本質は「利息付きで預金に似た商品」が適切な規制なしに並行銀行システムを作るのは危険。
- 預金への影響は資金の出所/行き先など複雑で一概に言えないが、一部の銀行に脅威になり得る。
- 重要なのは「消費者にどんな便益があるか」。便益があるなら参入/自社改善、便益がないなら“解決策が問題を探している”可能性。
補足(Dimon):ABA等のレターはコミュニティ銀行だけでなく「全銀行」が署名。
2) 口座数は増えるのに預金が伸びない理由
Q(Schorr):チェック口座純増170万は強いのに、預金成長は小さい。投資資産+17%が預金を食っている?
A(Barnum):
- 一部関係はあるが主因ではない。
- 「フランチャイズ成長(口座増)」と「利回り追求フロー(yield-seeking)」が拮抗。利回り追求はピークから大幅低下したがゼロではない。
- 貯蓄率低下等もあり、CCBの「口座当たり残高が再成長する局面」は先送り。
- そのため2026の消費者預金成長見通しは、Investor Dayで示した想定より低い。
3) 2026のフィー見通し:どこが強いのか(ただしガイダンスは避ける)
Q(Usdin):NIIと経費は示したが、フィーのどこを強気に見ている?
A(Barnum):
- 具体的なフィーガイダンスは出さない(市場依存で変動大)。
- ただしIBフィーは強気(案件が26年にずれ)。
- Marketsはフランチャイズに強気だが、25年が非常に強かったため「なるようにしかならない」。
- WM/AM(CCBおよびAWM)はフランチャイズに強気。ただし市場上昇(評価益)寄与は慎重。
- 経費増は「短期のボリューム連動(良い経費)」と「長期の成長投資」の両方。
4) 効率性指標 vs ROTCE:毎年の正のオペレバは追わない
Q(Usdin):効率性指標とROE/ROTCEのバランスをどう取る?
A(Barnum):
- ROTCEや効率性比率は“アウトプット”。
- 17%未満でも資本配賦する(自社株買いのインプライドリターンより高ければ株主に合理的)。
- 「毎年の正のオペレバ」は数学的に永続的なマージン拡大を意味し非現実。
A補足(Dimon):資本投下の結果として効率性比率は上下する。
5) Apple Card買収:狙いと統合に2年かかる理由
Q(McDonald):Apple Cardの魅力は?コーブランド/プラットフォームで何を狙う?
A(Barnum):
- 経済的に魅力あるコーブランド取引で「win-win-win」。
- AppleはUX/決済革新のリーダーで、分配チャネルとして強力。
- 統合は2年:成功させる過程自体がJPMの近代化・UX改善を加速させる。
Q(Graseck):2年は主に技術が理由?新スタック構築?
A(Dimon):
- 他の理由はない。Apple CardはiOS統合の独自スタック。
- それをJPMのシステムに組み込むため、再構築が必要。コストもかかる。
- Appleの求める顧客保護/体験水準は「良い要求」で、それを自社に取り込める。
6) クレジットカードAPR上限(価格統制)の影響:消費者に“信用供給縮小”が直撃
Q(McDonald):APRキャップの影響と戦略対応は?
A(Barnum):
- 実現可能性の推測は避け、仮に起きた場合の一般論:
- クレジットカードは極めて競争的で利幅は既に最適化されているため、価格統制で利幅が縮むのではなく提供形態が激変。
- 結果として 広範な信用アクセス喪失(特に必要とする層ほど)=消費者・経済に悪影響。
- JPMにとっても大きなビジネスであり、悪影響は明確(ただし定量化は避ける)。
Q(Graseck):リボ層だけの問題?カード全体へ波及?
A(Dimon):
- primeは相対的に影響小、subprimeは劇的。
- コーブランドは構成次第で影響が大きい(案件ごとに異なる)。
- 具体案次第で影響度は変わるが、現状の説明通りなら「非常に劇的」。
Q(Poonawala):1/20期限とされる中、政権から実務的コミュニケーションは?
A(Barnum):情報が乏しく回答回避(SNS投稿起点で急展開、把握できない)。
7) 2026マクロとリスク(Jamieの見立て)
Q(Najarian):2026は追い風+規制緩和期待の一方、APRキャップ等も。どう見る?
A(Dimon):
- 短期(6〜12か月)は概ねポジティブ:消費者は資金、雇用は弱含むが存在、One Big Beautiful Billによる刺激、規制緩和で資本再配分も可能。
- ただし構造的リスクは大:地政学、米国含む大きな財政赤字(永遠には借り続けられない)。
- 結局は「与えられた世界で顧客に奉仕しナビゲートする」。足元の追い風は意識するが、永続は前提にしない。
8) NIIを支えるバランスシート前提(ローン・預金の内訳)
Q(Najarian→Barnum):$95bn(NII ex Markets)の前提となる成長イメージは?預金は?
A(Barnum):
- NIIの主因はカードローン成長。2026のカードローン成長は**6〜7%**想定(リボ正常化の追い風は一巡)。
- ホールセール預金:25年は非常に強かったため、26年は強気だが上回るのは難しい=より控えめ想定。
- 消費者預金:口座獲得は強いが、利回り追求フローがゼロでないため口座当たり残高の反転が遅れ、反転は26年後半想定 → 26年CCB預金成長は「緩やか」だがInvestor Day想定より低い。
補足(Dimon):Fedが「T-billを月$40bn買う」議論(QEとは呼ばない)があり、準備預金→ホールセール預金にまず出やすい=システム流動性の追い風になり得る。
補足(Barnum):その増加は高βのホールセールに偏りやすく、NIIの前年差への寄与は限定的になりがち。
9) NBFI与信の増加背景:規制・裁定とレバレッジドレンディング指針
Q(Cassidy):NBFIの増加要因(市場・規制圧力)を詳しく。
A(Dimon):裁定(arbitrage)。AAA部分を持つ方が規制資本上有利など。銀行と保険の間の裁定も。裁定を見たら「なぜそうなるか」を規制当局は問うべき。
A(Barnum):加えてレバレッジドレンディング指針が銀行の貸出を制約し、民間信用(private credit)の成長を加速させた面。JPMはプロダクト非依存で競争(ユニトランシェ迅速実行 vs シンジケーション)し、NBFIは競争相手でも顧客でもあり得る。適切にやれば貸し手としても歓迎。
10) Markets NIIがbn(24)→.3bn(25)→bn(26E)へ:戦略ではなく金利感応
Q(Cassidy):Markets NIIを伸ばす戦略は?
A(Barnum):
- 短期は主に**金利(政策金利)**で動く(負債サイド感応、金利が高いほど低下しやすい)。
- ミックス(先物 vs 現金等)で“損益影響が実質ない”振れも出るため、重視しない。
- Marketsのバランスシートが大きくなり、この効果が大きくなったので、切り分けて説明している。
A(Dimon):NIIを狙って運営していない。取引が生む総収益を見ている。FICC/Equitiesの強い人材・技術・販売網で市場成長を取り込む。NIIは結果であり単独ではほぼ無意味。
11) 2026経費ガイダンス(前年差+約bn)の中身:詳細開示は限定
Q(Mayo):経費ガイドの前年差+約$9bnの詳細、テック/AIの増分とリターンは?
A(Dimon):
- 競争上不利になる詳細は出さない。Apple、インフレ、収益増に伴う費用増なども織り込み済み。
- 成長機会が大きい(支店網、海外展開、決済、パーソナライゼーション、AI等)。
- SRI(※文脈上は規制/サイバー/リスク系イニシアチブを指している可能性)も想定以上に大きいかもしれない。
- 結果で示す。細目の四半期開示はしない。
A(Barnum):
- 2025年に「living within our means」を強化し最適配分に自信。
- ただし26年はやるべきことが多く、テック人員を追加計画(Apple Card以外も)。AIは一部だが他要素も大きい。
- オフィス回帰に伴う職場環境整備(スペース/改修)などの“追いつき”もあるが、過度に強調しない。
A(Dimon):不動産は小さい。医療費は$300mm等、項目ごとにあるが本質は競争力維持。
フォロー(Mayo):AIは増える?
A(Dimon):増えるが主要ドライバーではない。将来効率化はあり得るが競争で顧客に還元され、マージンとして独占できない。フィンテックも含め競争相手を見て「置いていかれない」投資をする。
12) 資本水準:過剰資本は十分、焦点は“資本だけではない”
Q(Poonawala):GSIB/Basel等の更新の中で、必要資本の上に200–300bpの余裕が適正?
A(Barnum):
- 目標水準の“ゴールシーク”ではなく、RWA/GSIB/ストレステストをデータで正しく設計すべき。
- GSIBは特に再検討余地(大手リージョナルとの差はどこまで妥当か、解像度が低い)。
- 直近はリスク/機会に備え余裕資本を多めに持つのは合理的だが、長期の「常時300bpバッファー」を前提にはしない。バッファーの使いやすさ(usability)議論もある。
A(Dimon):過剰資本は$30–40bn以上になり得る。資本が問題になるシナリオはない。安全性は資本だけではなく、金利リスク、流動性、解決計画など。
13) 2026ローン需要:依然カード中心、ホールセールは“控えめに前向き”
Q(Mitchell):利下げや規制緩和で、C&Iや住宅など需要の裾野が広がる兆しは?
A(Barnum):
- 住宅ローンは市場変動で「忙しい日」もあったが、住宅市場の構造課題は残る。
- 2026のCCBは基本「カードが中心」。
- CIBの伝統的C&Iは**“中程度に前向き”**(ただしC&Iはアウトプットで、クライアント獲得の結果として増える面が大きい)。
Q(Mitchell):企業クレジットは改善?懸念?
A(Barnum):
- 今期のチャージオフは概ね既に引当済み。
- マージナルには「ダウングレード>アップグレード」で小さくネガ寄り、LGDをやや引き上げ。
- ただし全体としては大きな懸念は見ていない。ホールセールのチャージオフは長期に低水準だったため、正常化でも増え得る。ホールセールは元々ラumpy。
14) 消費者預金競争(利下げ局面)
Q(McGratty):利下げで預金競争はどう変わる?
A(Barnum):
- 競争は常に激しい。新しい特段の変化は聞いていない。
- 政策金利低下は利回り追求フローをさらに弱める方向(既に低いが)で、預金/口座当たり残高の反転に追い風になり得る。
15) AWMの持続性と成長機会
Q(McGratty):AWMの好調は持続するか、成長余地は?
A(Barnum):
- AWMは重点投資領域。プロダクト革新がAUM成長に寄与。
- PBのアドバイザー/バンカー採用が成功しており、今後も積極投資。フランチャイズは非常に良好。
総括
1) “強い数字”の裏にある最大の論点は Apple CardのRWA衝撃 と 経費の固定費化リスク
- Apple Cardは単なる「魅力的なコーブランド」ではなく、先進法RWAで約$110bnという異常なインパクトを一時的に生み、資本管理の説明難易度と投資家の誤解リスクを跳ね上げた。
- 経営陣は「近く$30bnへ低下」と言うが、ここは**“いつ、何がトリガーで、どの程度確度が高いのか”**が投資判断上の核心。コールではそこが数値として詰め切れていない。
- 2026経費$105bn(前年差+約$9bn相当の文脈)は、「競争のための投資」として語られたが、内訳の検証可能性が低い。
- 「競争上不利だから開示しない」は理解できる一方で、投資家に残るのは“信じてくれ”だけ。検証不能な大型経費増は、株価のディスカウント要因になり得る。
✅ 良い点:成長投資を躊躇しないのは長期競争力に資する
❌ 悪い点:投資のKPIが見えず、失敗時のダウンサイド(固定費化)だけが残る構図
2) CCBは「口座は増えるが預金が増えない」— ここは美談ではなく構造問題
- 170万の純増チェック口座は驚異的だが、預金が伸びない理由として「利回り追求フローがまだ残る」「口座当たり残高の反転が26年後半」と説明。
- これは言い換えると、獲得した顧客の資金がJPMの預金に滞留しにくいことを意味する。
- 預金は銀行のコア競争力であり、ここが伸びないなら、将来のNII耐久性に疑義が出る(特に利下げ局面でのベータ、競争商品への移動など)。
⚠️ 厳しく言えば:“口座獲得=勝ち”ではない。資金がついてこないなら収益化効率が落ちる。
3) カードAPRキャップ議論は「リスク」ではなく、事業モデルを壊す“制度ショック”
- 経営陣の見立ては明確で、価格統制は信用供給の大幅縮小につながる。
- ただ、コール時点で「情報がない」として行政とのやり取りも語らず、マーケットの不安を払拭できていない。
- もし進展すれば、影響はsubprimeや一部コーブランドで致命的になり得る。JPMは分散があるとはいえ、カードは大きな収益源で、**“悪いが定量は言えない”**では株価は納得しない局面が来る。
4) MarketsとAWMは強いが、2025の強さが“比較の罠”になる
- Equities +40%は非常に強いが、経営陣自身が「2025は例外的に強い」と言っている。
- AWMはフローもマージンも素晴らしいが、「市場上昇の寄与には慎重」と述べており、相場環境が変わると伸びの質が変わる可能性を匂わせる。
- つまり、2026は**“絶対値で強い”より、“前年が強すぎて見劣りする”**リスクが高い。ここは株価の上値を抑える典型的パターン。
5) NBFI与信:損失が少ないのは“安全”ではなく“サイクル未経験”の可能性
- 2018以降チャージオフ1件は目立つが、経営陣が自ら「伝統的な信用サイクルが来ていない」「深いリセッションで補完が吹き飛ぶと損失が出る」と言っている。
- これは、現状の低損失が構造的優位というより環境依存であることの自己認識。
- “裁定”の話(規制資本・ガイドライン)は、裏を返すと規制が戻れば収益機会が変質する余地がある。
株価への示唆(材料整理)
✅ ポジティブ材料
- 4Q:増収+7%、ROTCE 18%(引当込みでも高水準)
- CIB/AWMが強い(Markets・資産運用フローが圧倒的)
- 2026 NII ex Markets $95bn維持、カードNCO **3.4%**見通し
- CET1 14.5%の資本余力
⚠️ ネガティブ材料
- 経費$105bn:内訳の検証性が低いまま大型増(固定費化リスク)
- Apple Card:先進法RWA $110bnという資本説明の複雑化・一時的とはいえ巨大
- 「口座増≠預金増」の構造問題(預金成長の鈍さが長引く)
- APRキャップという制度ショックの不確実性(定量が出ない)
- 2025が強すぎる反動で、2026の見え方が悪化しやすい

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