JPモルガン・チェース(ティッカー:$JPM)の2025年度第1四半期決算についてまとめます
決算概要
アナリスト予想平均と結果の比較をまとめます。
結果 | 予想 | 判定 | |
---|---|---|---|
EPS | $5.07 | $4.64 | 〇 |
売上高 | $45.31B (YoY +8.0%) | $44.14B | 〇 |
業績ハイライト
主要財務指標(全社)
指標 | 数値 | 前年同期比 |
---|---|---|
売上高(Revenue) | $460億 | +8%(+$35億)🟢 |
純利益(Net Income) | $146億 | 非公開 |
一株当たり利益(EPS) | $5.07 | 非公開 |
自己資本利益率(ROTCE) | 21% | 非公開 |
営業費用(Expenses) | $236億 | +4%(+$8.4億)🟥 |
信用コスト(Credit Costs) | $33億 | 非公開 |
貸倒引当金残高(ACL) | $276億 | +$9.7億の積み増し🟥 |
CET1比率 | 15.4% | 前四半期比▲30bp🟥 |
株主還元総額 | $110億(自社株買+配当) | 配当:$1.40/株に増配🟢 |
特記事項
- First Republic関連の$5.88億の利益が含まれており、これは10-Kで事前開示済み。
- FDIC特別課徴金の$3.23億の取り崩しあり(前四半期は$7.25億の計上)。
- 失業率の加重平均見通しが前四半期の5.5%から5.8%へ上昇🟥(リスクシナリオ重視のため)。
コンシューマー & コミュニティ バンキング(CCB)
指標 | 数値 | 前年同期比 |
---|---|---|
純利益 | $44億 | 非公開 |
売上高 | $183億 | +4% 🟢 |
平均預金残高 | 非開示(前年比 -2%) | 横ばい(QoQ) |
投資資産残高(顧客) | 非開示(前年 +7%) | 非公開 |
住宅ローン起債 | 非開示(前年 +42%) | 成長基盤は小さい |
カード & オート売上 | 非開示(カード+12%、オート+20%) | 🟢 |
信用コスト | $26億 | 🟥 |
ネットチャージオフ | $22億(前年比+$2.75億) | 想定通りの範囲🟢 |
引当金積み増し | $4.75億(うちカード:$4億) | 🟥 |
補足
- 消費者の経済状況は依然として良好。
- キャッシュバッファ、支払能力、信用利用率などは想定通り。
- 支出の「前倒し」が一部で発生(関税前の購入)🟢。
コマーシャル & インベストメント バンキング(CIB)
指標 | 数値 | 前年同期比 |
---|---|---|
純利益 | $69億 | 非開示 |
売上高 | $197億 | +12% 🟢 |
IB手数料 | 非開示(+12%) | 🟢 |
アドバイザリー | +16% | 🟢 |
債券引受手数料 | +16% | 🟢 |
株式引受手数料 | ▲9% | 🟥 |
マーケット収益 | +21%($17億増) | 🟢 |
債券トレーディング | +8% | 🟢 |
株式トレーディング | +48%(派生商品好調) | 🟢 |
有価証券サービス | +7% | 🟢 |
費用 | $98億(+13%) | 🟥 |
信用コスト | $7.05億 | 主に引当金積み増し🟥 |
補足
- 市況悪化を受けIBパイプラインの変換に慎重姿勢を採用。
- 株式部門は高ボラティリティを活かし好業績。
- ディール案件は先行き不透明なため「様子見」姿勢が強い。
資産・ウェルスマネジメント(AWM)
指標 | 数値 | 前年同期比 |
---|---|---|
純利益 | $16億 | 非開示 |
売上高 | $57億 | +12% 🟢 |
経費 | $37億 | +7% 🟥 |
プレタックスマージン | 35% | 安定 |
総運用資産 | $6兆(クライアント資産$4.1兆) | +15% 🟢 |
ローン残高 | +5%(QoQ横ばい) | 🟢 |
預金残高 | +7%(QoQ▲2%) | 安定 |
コーポレート部門
指標 | 数値 | 前年同期比 |
---|---|---|
純利益 | $17億 | 非開示 |
売上高 | $23億(+1.02億) | 🟢 |
NII | $17億(▲8.26億) | 🟥 |
非金利収益 | $6.53億(前年は▲2.75億) | 有価証券売却益あり🟢 |
費用 | $1.85億(▲11億) | 🟢 |
通期見通し(ガイダンス)
項目 | ガイダンス | 前回比 |
---|---|---|
NII(Exマーケット) | 約$945億 | 上方修正🟢 |
全社調整後経費 | 約$950億 | 変更なし |
カード貸倒率(NCO) | 約3.6%(前回予想と一致) | 変更なし |
💬 質疑応答ハイライト
🟡 マクロ経済と貸倒引当の見通し(Ken Usdin, Erika Najarianなど)
Q: 景気後退リスクの高まりが見られる中、カード貸倒率見通しは据え置きで良いのか?
A:
- 現時点の貸倒率3.6%は、既存のデフォルトパターンや遅延の流れに基づいた機械的な見通しであり、「深刻な景気後退が来れば当然変化する」(Jamie Dimon)。
- 今回の引当金積み増しは実際の信用悪化ではなく、将来不確実性に備えたダウンサイド・シナリオの重み付けを反映した結果。
🟥 ネガティブ要因:
- 「様子見」姿勢の企業が増加し、M&Aや設備投資にブレーキ。
- 小規模企業や中堅企業では、影響がより顕著。
- 投資銀行部門では慎重なスタンスを維持。
🟢 資本政策と規制環境(Michael Mayo, Gerard Cassidyなど)
Q: 政権交代で規制緩和の見通しはあるか?
A:
- 「SLRやLCR、G-SIBバッファなどの欠陥は広く認識されている」(Jamie Dimon)。
- これらを適切に修正すれば、数千億ドルの貸出余力が創出可能と強調。
🟢 マーケット部門の見通し(Steven Chubak)
Q: マーケット部門の今後の収益見通しは?
A:
- 高いボラティリティと正常な流動性が続けば好調を維持できる。
- ただし「取引量が細る悪いボラティリティ」の可能性には警戒。
🟡 消費者行動の変化(Matt O’Connor, Betsy Graseckなど)
Q: カード支出のトレンドは?
A:
- 旅行関連支出には減速が見られるが、関税前の駆け込み需要も確認され、全体としてはプラス要素。
- 低所得層ではバッファが薄まっているが、深刻なストレスの兆候は見られない。
🟢 費用コントロールと効率化(Saul Martinez)
Q: 景気後退に備えた投資抑制やコスト削減の検討は?
A:
- 投資のROIが変わるなら見直すが、単なる見かけの費用削減のために投資を止めることはない。
- 一方で、「悪い費用(冗長な手続き、非効率な業務)」の見直しは積極的に実施中。
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