コラム:ホルムズ海峡閉鎖のリスクが低い理由

コラム

最近のイラン・イスラエルの紛争により、ホルムズ海峡閉鎖のリスクが話題に上がっていますが、実際に閉鎖されるリスクはほとんどありません。この記事では、ホルムズ海峡の重要性とその閉鎖リスクが低い背景についてまとめます。

ホルムズ海峡の重要性

ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ、幅わずか約50キロメートルの狭い水路です。世界の原油輸送の約30%を占めるため、エネルギーの安全保障にとって非常に重要な位置にあります。海峡が封鎖されると、全世界の石油供給に大きな影響が及び、国際経済に大きな波及効果が生じる可能性があります。

過去事例

過去にはイランがホルムズ海峡の閉鎖を示唆して緊張を高めた事例がいくつかあります。

1980-1988年:イラン・イラク戦争

イラン・イラク戦争では、両国がホルムズ海峡を戦略的なポイントと見なしていました。特に、イランは海峡を封鎖することでイラクの経済を圧迫しようと試みました。この期間、数回にわたって海峡の安全が脅かされ、石油輸送に影響が出たことがあります。

2008年、2011年、2012年:イラン核開発問題

これらの年には、国際的な核問題に関する西側諸国との緊張が高まる中で、イランはホルムズ海峡の封鎖をちらつかせました。特に2012年には、アメリカがイランに対する経済制裁を強化したことに対して、イランは報復として海峡の封鎖を示唆し、短期間ですが原油市場に混乱をもたらしました。

2019年:タンカー攻撃とドローン攻撃

アメリカとイランの間の緊張が再び高まった2019年には、ホルムズ海峡付近で複数の商船が攻撃を受けました。これらの攻撃はイランが関与しているとされ、海峡を通過する船舶の安全が脅かされました。また、同年にはサウジアラビアの石油施設がドローン攻撃を受ける事件も発生し、これが海峡の安全への影響を懸念させる事態となりました。

ホルムズ海峡閉鎖の可能性

前述のようにイランがホルムズ海峡の閉鎖を示唆して緊張を高めた事例はありますが、実際にホルムズ海峡が閉鎖されたことはなく、その可能性も非常に低いです。その理由は、以下の通りです。

  1. 外貨収入:イランは外貨収入の大部分を原油輸出が占めており、海峡の閉鎖は即座に自国経済の破壊にもつながります。
  2. 経済制裁:イラン経済は2018年にアメリカが核合意を離脱してから強化された経済制裁により、現在深刻な不況(スタグフレーション)に陥っています。ホルムズ海峡を閉鎖すれば、国際社会はさらに強硬な態度で応じることが予測され、イラン政府は窮地に立たされることになります。
  3. 軍事介入:アメリカを含む国際勢力は、必要に応じて軍事介入を行い、海峡の閉鎖を解除する意向を示しています。

結論

イランがホルムズ海峡を閉鎖に踏み切る可能性は極めて低いです。これはイラン自身の経済的自殺行為となるだけでなく、経済制裁の強化国際的な軍事介入を引き起こすリスクがあるためです。したがって、一時的な航行障害には警戒が必要ですが、完全な閉鎖は現実的にありえません。

また、最近のイスラエルとイランの応酬は、国内政治や国際的な立場を強化するためのパフォーマンスの側面が強いと考えられます。両国が実際に大規模な軍事行動に出る可能性は低く、過度に心配する必要はないと考えます。

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