コインベース(ティッカー:$COIN)の2025年度第4四半期決算についてまとめます
決算概要
今期実績
| 項目 | 予想 | 実績 | 判定 |
|---|---|---|---|
| EPS(GAAP・希薄化) | -0.05 | -2.49 | 💥🔴 -4880.0% |
| 売上(Net revenue) | 1,751 | 1,710 | 🔴 -2.3% |
補足:
EPS YoY:-153.2%(4.68 → -2.49)
売上 YoY:-22.2%(2,197 → 1,710)
(参考)Q4の赤字要因:暗号資産投資ポートフォリオ損(主に未実現)718M、戦略投資損 395M などが主因(会社説明)
ガイダンス(会社見通し:Q1’26)
| 項目 | 会社見通し | 判定 |
|---|---|---|
| 次期EPS | 未提示 | — |
| 次期売上 | 未提示(総売上レンジなし) | — |
| 次期S&S売上 | 550–630 | 🔴(Q1’25比:-15.5%) |
| 次期費用(T&D+G&A) | 925–975 | — |
| 次期費用(S&M) | 215–315 | — |
ガイダンスYoY(比較対象:Q1’25実績S&S 698.1):
・次期S&S売上(レンジ中央値590で計算):-15.5%
補足(会社コメント):Q1に入って2/10時点のTransaction revenueが約420M(Q1の約半分進捗と説明、外挿注意)
業績ハイライト
全体:
- Q4のNet revenueは1.71B(Q/Q -5%)と減速。一方でS&Sは727Mと高水準を維持し、収益源の分散を継続。
- GAAP赤字は「事業の収益力」というより、暗号資産・投資評価損の影響が大きい構図(Adjusted Net Incomeは178M、Adjusted EBITDAは566M)。
セグメント(開示の見方):
- 会社の“本丸”KPIは Net revenue(取引+S&S)で、Q4は取引収益983M、S&S 727M。
- USDC関連(Stablecoin revenue)はQ4で364M(市場規模・保有残高がドライバー)。
キャッシュ・マージン:
- 現金・現金同等物 11.3B。自社株買い実行の一方で流動性は厚い。
懸念点:
- 収益の循環性(取引収益は市況連動)に加え、投資評価損がGAAPを大きく振らせる点(投資・暗号資産の評価変動が利益の見え方を歪める)。
- Q1’26のS&S見通しは減速方向(低金利・暗号資産価格・ステーキング率低下の影響を示唆)。
質疑応答ハイライト
テーマ:BTC購入方針(財務運用)と自社株買いの関係
Q(Canaccord:Joseph Vafi):
- 追加でBTCを買う判断軸は何か。BTC以外の資産も増やすのか。
A(CFO): - 週次でBTCをドルコスト平均的に購入。四半期の営業利益が出た場合、その一部を購入原資に回す。基本はBTC中心で、たまにトップ5資産も買うが、資金の95%はBTCに向ける。Q4は39M投入、Q1は緩やかに増える見込み。
(フォローアップ)買い戻しとBTC購入は二者択一か?
A:別枠。買い戻し枠は追加で2B承認、2/10時点で利用可能額は約2.3B。
分析:
- 経営陣の本音:暗号資産保有を“戦略的な長期保有”として制度化(週次・DCA)し、裁量を減らして投機色を薄めたい。
- ポジティブ材料:買い戻し枠を厚くしつつ、BTCも積み増す「二刀流」を明確化。
- ネガティブ材料:市場が急落局面だと、GAAPの評価損が拡大しやすい(業績コミュニケーションが難しくなる)。
- 潜在リスク:BTCの保有増が、将来的な規制・会計・投資家層の分断(保守層離れ)を招く可能性。
テーマ:国際成長の減速感と、2026–27の打ち手
Q(Rosenblatt:Chris Brendler):
- 競合ニュースもある中、国際の成長をどう見ているか。Deribitを除くK開示の成長率が鈍化して見えるが、2026/2027をどう描く?
A(CFO): - 国際は引き続き注力。米国で予測市場・株式を出したことで、米国外でも取扱い資産を拡張していく。国際売上比率は高10%台で直近は安定。欧州はMiCA対応で基盤整備を進め、顧客をルクセンブルクへ移管してコンプライアンス整備が進展。次の重点市場としてインドも挙げ、2025は基礎固め、今後は収益化と成長に焦点。
(フォローアップ)国際でのプロダクト優先順位は?
A:主軸はリテール。Baseも100超の国で国際展開しており成長余地。
分析:
- 経営陣の本音:国際は“規制整備の進捗”が最大のボトルネック。MiCA準拠を武器に欧州で勝ち筋を作りたい。
- ポジティブ材料:欧州の運営拠点・規制体制を整え、マーケ・拡大フェーズに移る示唆。
- ネガティブ材料:国際は「高10%台で安定」とも言えて、急成長ストーリーではない(短期の上振れ要因が薄い)。
- 潜在リスク:国・地域ごとの規制変更で再投資が必要になり、収益化が後ろ倒しになり得る。
テーマ:ステーキング収益の低下要因(価格か、レートか)
Q(Deutsche Bank:Brian Bedell):
- 4Qでステーキング利回りが下がったのは、価格下落要因か、それ以外か。
A(CFO): - 2要因。ETH・SOLの価格低下でステーキング収益が減ったこと、加えてプロトコルの報酬レートが低下したこと。成熟に伴い報酬は下がりやすい。
分析:
- 経営陣の本音:ステーキングは構造的に“成熟で利回り低下”が起こり得る前提を置いている。
- ポジティブ材料:要因分解が明快で、短期(価格)と中長期(プロトコル率)を分けて説明。
- ネガティブ材料:利回り低下が常態化すると、ステーキング収益は成長ドライバーとしては弱くなる。
- 潜在リスク:価格下落×レート低下が重なる局面では、S&Sの一部が同時に傷む。
テーマ:Tokenize(トークン化)戦略の現在地
Q(Deutsche Bank:Brian Bedell フォロー):
- “Coinbase Tokenize”の進捗は?
A(CFO): - 2026の優先事項。Echo買収(Q4’25)とLiquiFi買収を統合し「Coinbase Token Manager」として、発行体が顧客へ配布するためのプラットフォームに。将来的には規制明確化に依存するが、株式のトークン化、その後に債券のトークン化が続く想定。
分析:
- 経営陣の本音:トークン化は“規制待ち”である一方、発行・配布のSaaS/インフラ側は先に押さえる戦略。
- ポジティブ材料:買収を通じてバリューチェーン(上場/カストディ/ステーキング/取引)と接続しやすい。
- ネガティブ材料:株式・債券トークン化は規制の解像度が上がるまで時間が読みにくい。
- 潜在リスク:規制が想定より厳しい場合、投資回収が長期化し、OPEXが先行する。
テーマ:市場構造法制(規制)とプロダクトロードマップの依存度
Q(KeyBanc:Alex Markgraff):
- 市場構造の法制が遅れると、12–24か月のロードマップにどの程度影響?
A(CFO): - 2026計画は規制アンロックに大きく依存していない。規制進展は上積み要因。デリバティブ、現物、株式、予測市場など既に伸ばせる領域がある。
(フォローアップ)決済(payments)の進捗を示す追加開示(TPV等)は?
A:重要性が出れば財務で分けて開示。重要性が小さい間は定性的アップデートや適切なタイミングでの数値提示。
分析:
- 経営陣の本音:規制法案は“勝てたらデカい”が、遅れても走れるように既存領域を増やしている。
- ポジティブ材料:規制の不確実性を織り込んだうえで、複数プロダクトで成長を作る姿勢。
- ネガティブ材料:決済は定量KPIの提示が限定的で、投資家が進捗を測りにくい。
- 潜在リスク:決済が立ち上がらない場合でもコストは先行しやすい(“いつ重要性が出るか”が不透明)。
テーマ:テイクレート低下(Simple→Advanced、Coinbase One)の構造影響
Q(Citi:Pete Christensen):
- Q/Qでスプレッド圧縮(実質テイクレート低下)は、加入者増で相殺できる性質か。成長は売上破壊にならないか。
A(CFO): - Q4は(1)SimpleからAdvancedへのミックスシフト、(2)Coinbase One内での増分取引が、見かけのテイクレートを押し下げた。Coinbase One会員は最もアクティブで粘着度が高く、取引だけでなくステーキング、カード、USDC保有など複数プロダクトで収益化でき、ユニットエコノミクスは全体で見ている。
(フォローアップ)MTUに加入者は含める?
A:含める。
分析:
- 経営陣の本音:短期のテイクレート低下より、LTV(会員の複数プロダクト収益)を重視。
- ポジティブ材料:会員制で“取引以外”に収益の柱を増やす設計が進んでいる。
- ネガティブ材料:取引手数料は構造的に薄まりやすく、取引市況が弱いと全体のレバレッジが落ちる。
- 潜在リスク:会員向け特典(例:USDC報酬)コストが上がると、S&Sの利益率が圧迫される。
テーマ:USDC “速度(velocity)”はどう収益化されるか
Q(William Blair:Andrew Jeffrey):
- USDCの流通速度が上がっても時価総額が増えない場合、それはCoinbaseのエコノミクスにどう効く?取引収益か、利回りか。
A(CFO): - ケース次第。Base上のUSDCならシーケンサー手数料等として収益化の可能性。API経由のUSDC決済ならプロダクト提供で収益化の可能性。プラットフォームに触れるか、Baseに触れるかで収益の取り方が変わる。
(フォローアップ)速度=収益化が進む、という理解でよいか?
A:USDCをプラットフォーム上の資産として収益化(Circle関係の収益と報酬コストの差分)する方法、Base上での決済トランザクション(シーケンサー手数料)として収益化する方法、APIの決済スイートとして収益化する方法がある。
(追加)規制法案で“ステーブル報酬”がレッドラインになるか?
A:産業全体でWin-Winを探す。顧客が報酬プログラムに参加できるよう支援しつつ、関係者(政府・銀行・業界)で落としどころを探る。
分析:
- 経営陣の本音:USDCは「残高(AUM)×利回り」だけでなく、「決済流量(フロー)×手数料」でも取りに行く二正面作戦。
- ポジティブ材料:Base(インフラ)とAPI(企業向け)で、収益化ポイントを複線化。
- ネガティブ材料:どのKPIが先に立つか(残高・流量・手数料単価)がまだ不確定で、見通しが読みづらい。
- 潜在リスク:規制が“報酬/リワード”に制限をかけると、獲得・維持コスト設計の作り直しが必要。
テーマ:クリプト冬(長期低迷)を仮定したコスト運営
Q(Needham:John Todaro):
- クリプト冬が悪化する想定で、費用削減はどれだけ攻めるのか。現水準で回せるのか。
A(CFO): - どんな市場環境でもAdjusted EBITDA黒字をコミット。収益機会が大きく悪化すれば費用を見直す。2026入りはフラットに開始し、調整しながら黒字を守る。
(フォローアップ)予測市場は新規顧客獲得か、既存の奪い合い(カニバ)か?
A:まだ2週間で外部マーケはしていない。既存ユーザーでは増分に見える。クロスセル+増分の両面になり得るが、現時点で断定は避ける。
分析:
- 経営陣の本音:最優先KPIはAdjusted EBITDAの“下方耐性”。成長投資はするが、赤字拡大は避ける。
- ポジティブ材料:コストは状況対応で可変にする姿勢(固定費肥大化を警戒)。
- ネガティブ材料:成長新規軸(予測市場)はまだ初期で、成功確度の定量材料が少ない。
- 潜在リスク:冬が長引くと、投資継続と黒字維持の両立が難しくなり、成長スピードを落とす判断が必要になる。
テーマ:S&S見通しの中身(利息収益、その他S&S)
Q(Barclays:Ben Budish):
- S&Sの見通しについて、USDC以外の利息収益は顧客現金利息とレンディングのどちらが大きいか。その他S&S(カストディ、Coinbase One等)の内訳感は?
A(CFO): - ガイダンスをプロダクト別には分解して提示していない。バランスシートで顧客法定通貨残高などを見れば推計可能。その他S&SはCoinbase Oneが最大、次がカストディ、それ以外は新しめで開示が限定的。
分析:
- 経営陣の本音:S&Sの詳細分解を出すほど“成熟”していない領域が多く、開示は慎重。
- ポジティブ材料:Coinbase OneがS&Sの柱として明確化。
- ネガティブ材料:投資家のモデル精度は上がりにくく、見通しのブレが株価ボラを招きやすい。
- 潜在リスク:金利低下局面では利息収益が逆風になりやすく、S&Sの安定感が試される。
テーマ:Baseの収益化(シーケンサー手数料)とBaseトークン
Q(Citizens JMP:Devin Ryan):
- Baseのスケールが進む中、シーケンサー手数料をどう考えるか(実験で上下するか)。また規制明確化が進めばBaseトークンの可能性は?
A(CFO): - シーケンサーをミリ秒レベルまで高速化し、採用に必要な水準にできた。スケールは進めるが、需要を超えて先行スケールはしない。手数料は整合的な水準で管理しつつ需要に合わせて拡張。Baseトークンは検討中だが新情報はなし。
分析:
- 経営陣の本音:Baseは“コスト/性能”で勝ち、まず採用を取りに行く段階(トークン発行は後回し)。
- ポジティブ材料:収益化(手数料)より、普及(採用)を優先するメッセージで長期のネットワーク効果を狙う。
- ネガティブ材料:トークンは材料として期待されやすいが、現時点でアップデートなし=短期カタリストにはなりにくい。
- 潜在リスク:L2競争の激化で手数料率の維持が難しくなる可能性。
総括
成長持続性:
- 取引市況の波は避けられないが、Coinbase One、USDC/決済、Base(インフラ)へ拡張して“取引依存の低下”を狙う構造は明確。
収益性:
- GAAPは投資評価損で大きく振れる一方、経営はAdjusted EBITDA黒字維持を最上位目標に置く(防御力重視)。
最大リスク:
- ① 市況低迷で取引収益が細り、② 金利低下でS&Sの利息系が鈍り、③ 規制(特にリワード/ステーブル周り)で獲得・維持コスト設計が揺れる、の同時発生。
株価影響:
- 短期:GAAP EPSの大幅ミス(評価損主因)でヘッドラインは弱い一方、会社が示す「黒字維持+多角化(USDC/決済/Base/会員)」の説得力がどこまで評価されるかで反応が割れやすい。
- 中期:規制の前進や、Base/決済の定量開示が出るほど“取引以外”のバリュエーションが乗りやすい。

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