7/14 ドナルド・トランプ米大統領候補がペンシルバニア州での講演演説中に狙撃される事件が発生しました。アメリカの大統領及び候補者への銃撃事件と市場への影響についてまとめます。
重大な市場影響を与えた事例
1. アブラハム・リンカーン大統領暗殺 (1865/4/14)
- 結果: 死亡
- 市場影響: 極めて大 ★★★★★
- NYSE一時閉鎖
- 株価推定5-10%下落
- 国債価格下落、金価格上昇
- 注: 当時の市場は現代と大きく異なる
2. ジョン・F・ケネディ大統領暗殺 (1963/11/22)
- 結果: 死亡
- 市場影響: 非常に大 ★★★★☆
- NYSE早期閉鎖
- ダウ平均2.89%下落、その後回復し12/31に新高値
- ドル下落、国債・金価格上昇
- 注: 冷戦期の不安定さも影響
3. ロナルド・レーガン大統領暗殺未遂 (1981/3/30)
- 結果: 生存
- 市場影響: 大 ★★★☆☆
- NYSE一時停止
- ダウ平均2.1%下落、翌日1.5%回復し2週間で完全回復
- ドル下落、国債・金価格上昇
- 注: 現職大統領への影響大だが回復も早い
中程度の市場影響を与えた事例
4. ジェームズ・A・ガーフィールド大統領暗殺 (1881/7/2)
- 結果: 死亡 (9/19)
- 市場影響: 中 ★★★☆☆
- 株価推定3-5%下落、2ヶ月で回復
- 注: 死亡までの不確実性が影響
5. ウィリアム・マッキンリー大統領暗殺 (1901/9/6)
- 結果: 死亡 (9/14)
- 市場影響: 中 ★★★☆☆
- NYSE 9/7閉鎖
- 再開後株価4.4%下落、1ヶ月で回復
- ドル下落、金価格上昇
- 注: 死亡までの不確実性が影響
限定的な市場影響を与えた事例
6. セオドア・ルーズベルト元大統領暗殺未遂 (1912/10/14)
- 結果: 生存
- 市場影響: 小 ★☆☆☆☆
- 全市場で0.3%未満の変動、長期影響なし
- 注: 再選候補者
7. フランクリン・D・ルーズベルト大統領選出者暗殺未遂 (1933/2/15)
- 結果: 生存
- 市場影響: 小 ★☆☆☆☆
- 株式市場で1%未満の変動、長期データ不足
- 注: 大恐慌の影響が上回る
8. ジョージ・ウォレス候補暗殺未遂 (1972/5/15)
- 結果: 生存
- 市場影響: 極小 ☆☆☆☆☆
- 全市場で0.5%未満の変動、長期影響なし
- 注: 主要政党候補ではない
9. ジェラルド・フォード大統領暗殺未遂 (1975/9/5, 9/22)
- 結果: 生存
- 市場影響: 極小 ☆☆☆☆☆
- 全市場で0.2%未満の変動、長期影響なし
- 注: 2度の事件でも影響は限定的
主な観察点
- 即時的市場反応:
- 大統領の死亡事例は最も大きな市場ショックを引き起こし、株価の急落(3-10%)や取引所の一時閉鎖をもたらすことがある。
- 現職大統領への攻撃は、生存の場合でも大きな影響(2-3%の下落)を与える。
- 元大統領や主要でない候補への攻撃は、市場への即時的影響が比較的小さい(1%未満)。
- 市場の回復パターン:
- 20世紀後半に向かうにつれ、市場の回復速度が向上する傾向が見られる。
- 多くの場合、1-2ヶ月以内に市場は回復し、長期的には事件以外の経済要因が市場を主導する。
- 資産クラス間の相関:
- 事件発生後、一般的に株価が下落し、金価格が上昇、ドルが下落する傾向がある。
- 国債価格は、不確実性の増大により上昇(利回りは低下)することが多い。
- 政治的・経済的文脈の重要性:
- 事件の影響は、当時の経済状況(例:大恐慌)や国際情勢(例:冷戦)によって増幅または緩和される。
- 政策の継続性に関する不確実性が、中期的な市場動向に影響を与える可能性がある。
- 制度的対応の進化:
- 時代とともに、危機対応メカニズムが進化し、市場の安定性が向上している。
- 近年の事例ほど、透明性の高い情報公開と迅速な市場対応が見られる。
- 長期的・間接的影響:
- 大統領の死亡や重大な暗殺未遂事件は、消費者信頼感や政治的プロセスに影響を与え、間接的に経済と市場に長期的な影響をもたらす可能性がある。
- 国際的な視点では、アメリカの政治的安定性に対する信頼が揺らぐ場合、ドルの国際的地位に長期的影響を与える可能性がある。
まとめ
総じて、これらの事件は短期的には大きな市場ショックをもたらす可能性があるものの、長期的には基礎的な経済要因が市場動向を主導する傾向にあります。特に今回のトランプ大統領候補への銃撃事件は、大統領候補であって現職の大統領ではないという点には留意する必要があるでしょう。今回の事件がトレード戦略へ与える影響はほとんどないと考えます。
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