2024年4月16日に発表されたIMF世界経済見通しの要旨をまとめます。
世界経済の現状
経済成長
- 2022-23年を通してディスインフレが進行したが、経済活動は驚くほど底堅かった
- インフレ率のピークから落ち着く中、景気後退への警告に反して経済は安定的に伸びた
経済を支えた要因
- 予想を上回る需要(政府支出、家計消費)と供給能力(労働市場参加率上昇)の拡大
- 主要先進国の家計によるパンデミック中の貯蓄活用
経済見通し
- 2023年世界経済成長率は3.2%と予測され、2024-25年も同ペース
- 世界インフレ率は2023年6.8%から2025年4.5%へ鈍化する見込み
- 先進国は新興国より早くインフレ目標に到達する見通し
中期的課題
- 世界経済成長率の5年後予測は3.1%と数十年ぶりの低水準
- 低中所得国の高所得収斂のペースが鈍化し、格差が根強い
- 一人当たりGDP伸びの鈍化は、構造的制約から資本・労働力が生産的企業へ流れにくいため
- 新興国の成長鈍化が貿易相手国の見通しにも影響
リスク要因
下振れリスク
- 地政学的緊張による価格高騰
- 労働市場のひっ迫によるコアインフレ高止まりと金利・資産価格下落
- 主要国間のディスインフレペース違いによる為替変動と金融圧迫
- 高金利による過度の景気冷え込みと家計の債務負担増
- 中国の不動産部門対策不足による成長鈍化と貿易相手国への打撃
- 財政健全化の急激な進展による経済活動の減速と気候変動対策の遅れ
- 地経学的分断化の進展による財・資本・人の流れの障害
上振れリスク
- 財政政策の過度の緩和による一時的な活況(ただし後々のコスト発生リスク)
- 労働市場参加率の更なる上昇によるインフレ鈍化とそれに伴う金融緩和
- AIと構造改革の進展による生産性上昇
政策課題
- 中央銀行は適時適切なインフレ抑制策でスムーズな着地を図る
- 財政政策は中期的な再建計画を導入し、債務の持続可能性を確保
- 各国は状況に応じた政策対応が必要
- 供給サイド改革の加速でインフレ抑制、債務削減、高成長の実現を目指す
- 地経学的分断や気候変動リスクを抑え、グリーン移行と債務再編には多国間協力が不可欠
原文リンク
https://www.imf.org/en/Publications/WEO/Issues/2024/04/16/world-economic-outlook-april-2024
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