中東の緊張が再び高まり、原油価格の上昇に対する注目が高まっています。本記事は、国際エネルギー機関(IEA)の2024年4月の月報概要を要約したものです。
要約
1. 世界の石油需要の見通し
2024年第1四半期の世界の石油需要は、OECD諸国の需要が非常に弱かったことにより、前回の予測よりも120 kb/d下がり、1.6 mb/dの成長となりました。ポストコロナの回復がほぼ完了し、自動車燃費の改善とEVの普及が需要増加を抑制する要因となり、2024年と2025年の石油需要成長はそれぞれ1.2 mb/d、1.1 mb/dに減少すると予測されています。
2. 非OPEC+による供給増加
非OPEC+、特にアメリカが2025年までの世界の供給成長を牽引すると予想されています。2024年には、世界の生産量が前年比で770 kb/d増加し、102.9 mb/dに達する見込みです。OPEC+が自主的な減産を継続する場合、その供給は820 kb/d減少する可能性があります。
3. 精油所の稼働率の上昇
2024年には精油所のスループットが前年比で1 mb/d増加し、83.3 mb/dになると予測されていますが、これは前月のレポートよりも160 kb/d低い数値です。これは、ロシアの稼働率低下やヨーロッパの計画外の停止、中国の活動の低迷によるものです。2025年にはさらに830 kb/d増え、84.2 mb/dになる見込みです。
4. 在庫レベルの変動
2024年2月には、世界の石油在庫が43.3 mb増加し、7か月ぶりの高水準に達しました。これに対し、陸上の在庫は2016年以降で最低水準に落ち込んでいます。OECDの業界在庫は、2月に7.6 mb減少し、5年平均を65.1 mb下回っています。
5. 原油価格の動向
ICE Brent原油先物は、中東の緊張の高まりやロシアの精油所に対する攻撃、OPEC+による生産カットの延長などを背景に、4月初旬に6か月ぶりの高値90ドル/バレルに達しました。原油価格の強さは、投資家センチメントの強気な動きによって支えられています。
6. 地政学的緊張と市場への影響
3月と4月初旬にかけて、原油価格はイスラエルとイランによる地政学的緊張の高まりと、年内の供給需要バランスの引き締まりが重なり、上昇しました。
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