4月8日、TSMCが米国から116億ドルの補助金及び融資を獲得したニュースがありましたが、これは米国の半導体産業支援策(CHIPS法)に基づいたものです。ここではCHIPS法の概要を説明します。
概要
「CHIPSおよび科学法」(CHIPS and Science Act of 2022)は、2022年8月にアメリカ合衆国で成立した法律であり、総額約2,800億ドル(約42兆円)を先端技術の研究開発に投資することを目的としています。この巨額の投資の内訳として、半導体生産の支援に527億ドル(約8兆円)が充てられることになっています。
目的
この法律の背景には、半導体製造能力の強化が、単なる産業政策を超え、経済安全保障の強化に不可欠であるという認識があります。実際に、2021年1月に成立した2021年度国防授権法の一部として、アメリカCHIPS法(CHIPS for America Act)が含まれていました。これは、半導体の国内生産能力の向上を促進するための措置であり、その延長線上にCHIPSおよび科学法が位置づけられています。
経済効果
CHIPS法に対する期待は極めて高く、法案の提出から成立までの約2年半の間に、半導体業界では合計約2,500億ドルの新規投資計画が発表されました。これらの投資により、約50万人の新規雇用創出が見込まれています。半導体事業は巨額の投資が必要であり、継続的な設備投資が求められるため、企業は政府からの資金援助に高い期待を寄せています。
実施体制
CHIPS法に基づく約527億ドルの予算は、商務省傘下の国立標準技術研究所(NIST)内に新設された「CHIPSプログラム室」によって執行されます。2023年2月28日には、資金援助の申請受け付けが開始され、今後10年間での目標として、最低2カ所の先端ロジック半導体の大規模クラスター形成や、複数の先端パッケージング量産施設の建設が掲げられています。
課題
CHIPS法の支援を受けるためには、「ガードレール条項」への対応が求められます。これは、中国やその他の安全保障上の懸念のある国での事業を制限するものです。半導体企業は、米国事業の拡張を図るために政府の支援を受けるか、または中国での事業拡大を維持するかの選択を迫られる可能性があります。
対象企業
実際に支援を受ける or 受ける見込みの企業は以下の通りです。
- Intel: 最大85億ドルの補助金と110億ドルの融資を受ける
- Micron Technology: Intelに次ぐ規模の支援を受ける見込み
- TSMC: 2030年までに米国アリゾナ州に第3工場を建設する計画で、最大66億ドルの補助金と50億ドルの融資を受ける
- Samsung Electronics: 60億ドル超の補助金を受ける見込み
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